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京都にある、世界で一番美味い店3選
京都に来たら二泊はするべきだ。そうでなければ、朝、昼、おやつ、夜、デザートと、全ての食事を京都で摂る一日を確保できない。京都は寺社仏閣を巡るのが定石とされているが、実のところ飯を食う場所である。
その証拠に、私は今回の二泊三日の京都旅行では、一度たりとも寺社仏閣を見学していない。四六時中飯のことだけを考え、飯を食べることに費やしている。
大学生だったときも、ずっとそうだった。何もかもがうまい京都に取り憑かれ、授業もすっぽかして、「たぶん もうすぐさ きっと」なんて息を止めたままどうでもいい行列に並んだりもした。さながら私はフードストレンジカメレオン。飯を食べるのが好きで、後はほとんど嫌いで、チェーンの味に馴染まない出来損ないのカメレオンだ。
まあそんな生活を続けていると、時たま世界一美味い店にも出くわすこともある。今回は、京都で世界一うまい店を3件紹介しようと思う。京都に行く機会があれば、是非とも食べてみてほしい。
(尚、紹介する店は全てお財布に優しい上、京都で一番栄えている中京区に位置するので、徒歩ではしごすることも出来る。)
①ひつじ 「ドーナツ(プレーン)」
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見た目はなんてことのないシンプルなドーナツだが、その味は唯一無二で、まさしく頂点であり至高。究極のドーナツだ。
まぶされた和三盆は上品な甘さを演出している上、非常に細かいテクスチャーをしているため、気づいたときには無くなっているほどの口溶けに驚かせられる。齧ると、カリッとした表面はとてつもなく薄く、食感が楽しい。そして中はもちもちを超えたもちもちで、もはやもにゃんもにゃんといったほうが近いかも知れない。私はこの外中のギャップに惚れた。
カリジュワのドーナツは、噛めば噛むほど素朴で優しい甘味が口いっぱいに広がり、脳が多幸感に溺れる。麻薬やギャンブルやクズ男なんか目じゃない。何かしらの依存者には是非とも、今の依存先からこのドーナツに変更して欲しい。
世界一美味いと断言できるこのドーナツは、基本的に揚げたてが提供される。いじらしくも、店員さんから「揚げたてなので、三分ほど経ってから食べて下さい」と声をかけられるが、この三分間は世界で一番長い三分間だ。しっかりと言いつけを守ったのち、是非歩きながら食べて欲しい。服が粉塗れになっていることも忘れる程美味いはずだ。
ただ、「ひつじ」には注意点が二つある。一つ目が営業日だ。大体一週間のうち三日しか開いていない。旅行中は全て休業日だった、みたいなことが多々あるので、予めSNSで営業日を調べておくとよいかもしれない。
二点目は、整理券制であるということ。この店は11時30分から営業するが、10時から整理券が配布され、そこに記載されている時間(15分単位)にもう一度来店しないと購入することができない。さらに、整理券一枚につき5個までと購入できる数が制限されているので、大量に買うことも不可能だ。そこは気を付けて欲しい。
私が大学生だった頃はいつでも買えたものだが、雑誌に紹介されたこともあり、今はかなりの人気店となってしまった。つい自分の応援していたバンドがメジャーに行ってしまったときみたいな、嬉しさと寂しさが混濁した気持ちになってしまう。ただ、本当に美味しいから時間の問題だったのだろう。美味いものはみんなで共有するに限る。
②欧風土鍋カレー近江屋清右衛門 「自家製欧風とろとろ牛バラカレー」
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寺町商店街にあるカレー屋さん「近江屋清右衛門」は、世界一美味いカレー屋である。
カレーと言えば、昨今はインドカレーやらスパイスカレーやらと様々な形で私たちを魅了し、実際それらも美味い。美味いし、京都でも有名店は数多く存在する。しかし、私はそんな今こそ「欧風カレー」を推したい。
このカレーは、まずご飯の上にどんと乗っかる大きな牛の塊がとんでもなく美味い。じっくりと炊かれた肉はほろほろで、スプーンでつついてやるだけで崩れるくらいの柔らかさ。それにブイヨンの効いたデミグラスソースがかかり、旨味の爆弾と化している。ちょっとしたフランス料理屋で頼んだら2、3000円くらいする代物だ。これがただのトッピングだというのだから恐ろしい。
カレーはライスとは別に、土鍋で提供される。これがまた美味いのなんの。口に入れた瞬間、可愛い甘さと複雑なスパイスの応酬が出迎える。その後、じわじわと可愛くない辛さが顔を出し、暴れ出す。割と辛いので、苦手な方は注意だ。私も苦手な方だが、辛い辛い言いつつも、どうにも伸ばした手が止まらない。トニオさんのパスタをつい食べてしまう虹村億泰になった気分になれるのも、この店の魅力なのかもしれない。
また、付け合わせのゴボウの漬物もさっぱりしていて美味い。漬物屋がやっているカレー屋だと小耳にはさんだが、まさしく京都らしくて良い。片手間にやっているとは思えないほど本格的な欧州カレーは、どうやって生まれたのか。歴史が気になるところだ。
そういえば、先述した「ひつじ」もどこかのカフェを経営している方が開店したらしい。最近はそうした副業的なお店のレベルが高いのかもしれない。
③Cafe Bibliotic Hello! 「フルーツタルト」
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京都御所に近いカフェ、「Bibliotic Hello!」はとんでもなく雰囲気がおしゃれで、店員さんもおしゃれだ。何なら自分以外の客も全員美男美女で、おしゃれだ。入るだけで自分もおしゃれになった気分になれる。まあ、気分になれるだけだが。
特に内観は海外の図書館の一角を切り取ったかと思うくらい本に溢れており、本好きにはたまらない。京都にはおしゃれなカフェがおぞましいくらい多いが、京都観光に疲れたら、是非ともここを選んで欲しい。
ここのメニューはかなり多く、どれも間違いない。しかし私はタルトが世界一美味いと思う。
タルトと言えば下のビスケット生地が薄く固いイメージがあるが、ここのタルトは肉厚で、しっとりとしている。この生地がたまらなく美味いのだ。こんなタルトは今まで、他の場所で食べたことが無い。
バターをそのまま食べているというか、バターをたっぷりと含んだスポンジを食べているというか、とにかくバターが(京都風に言えば)しゅんでいる。バターの優しく、そして暴力的なコクに胸が弾む。もはやDVだと思う。とんでもないカロリーをしているだろうから、食べた後、体重計を見て落胆することかと思う。それでも、心を掴んで離さない。悪魔的に魅力的で美味すぎるのが悪い。
上にのるフルーツも、常時八種類くらいから選べるのも良い。今回はイチジクを選択したが、前回は洋ナシ、前々回はシャインマスカットを選んだ。訪れる度に新たな顔を見せるので、飽きが全くこない。
このタルトを食べるために京都に毎年行っていると言っても過言ではない。私は初めて食べた時泣いた。
以上が京都で食べられる世界で一番美味いものだ。勿論味覚は人それぞれであり、受け入れられない方も中に入るかもしれない。しかし、アレルギーや辛さが極端に苦手な方以外には、大抵受け入れられるものであると私は確信している。行きたい店が決まってない際は、参考にしてもらえると非常に嬉しい。
京都は美味いもので溢れている。本当はパン屋や焼肉屋、居酒屋フランス料理など、もっとお伝えしたい店は沢山あるが、今回はここで筆を置くこととする。
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