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濃く、やさしく、うっとりするほど力強い餡の甘み。東京浅草・木村家本店「人形焼き」。

小麦粉に卵と砂糖を練り込んだ、
むっちりとした生地に
ゆっくりと歯を入れると、
砂糖の粒で鼻の粘膜が
ふんわりと包まれるかのように
甘い温もりが広がる。

舌の奥を撫でるのは、
やさしすぎるほど上品な餡の甘み。
と感じたのも束の間、
にょきりとした生地の食感に、
こってりと甘みが絡む
相乗効果がたまらない。
すると、
舌の中ほどの脇に、
チリチリと刺すほど 
強い甘みが生まれ、
舌の周りを濃厚で甘露な
甘波が小さくうねりながら広がる。

上あごには甘みのベール、
さらに、まろやかな
丸みのある甘さが
舌奥にアーチのように
浮かんだかと思うと、
いきなりザブリとした餡の砂糖感が
渦巻くように盛り上がり、
とがったように濃密な甘みは、
心地よい噛み心地の生地から生まれる
卵砂糖のとろり味と絡み合い
噛むほどに絡んで、
また、知らない甘い
世界を知らせてくれる。

浅草寺「宝蔵門」手前、右手角。

東京・浅草、創業百余年 元祖「木村家本店」。
人形焼きを食べながら、
五重塔・雷様・提灯・鳩の四つの形を
探すのも楽しい。


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