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およそ甘みの全てに舌で甘えるかのように、「キャラメルバナナケーキ」。#レトリカル食レポ(16)
フォークで持ち上げて口に持っていくと、
ほのかなバナナの匂いが鼻腔を包む。
バナナの果肉とキャラメルクリームが
じんわりと濃く染みわたったスポンジは、
くにゃりとした程よい弾力と共に、
バナナともキャラメルとも違う
濃厚な甘みをじゅわりと広げたかと思うと、
一気に口中にあふれる甘美なうねりとなって
味覚に押し寄せ、
私は、甘みに甘えるかのように応える。
ふと、舌先にまろやかな
温かみにも似た
甘さがふれたかと思うと、
上あごを、一気にまるみのあるふんわりとした
蜜のようなうっとり感で塗り替え、
舌の横から濃厚なキャラメルの渦が
わき上がれば、
舌の根元には濃密な甘露が
噛むほどにしたたる。
目をつぶる陶酔のなか、
舌の上を時折、
一本に凝縮された甘い
官能が横切る。
*
江ノ島電鉄線「由比ヶ浜」駅、
改札を出て右へ数分歩いた左側、
「CLOVERLEAF(クローバーリーフ)」。
そのどれもが、
これまで舌が覚えていた
スイーツの基準を変える。
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