「甘渋」と言いたいような、とろりとした抹茶のほのかな甘みを舌で愉しむ。#レトリカル食レポ。
美しく泡立つ抹茶緑を
たっぷりと口にふくむと、
やわらかい温もりのような
渋みが口いっぱいにひろがる。
舌先に、とろりとした「甘渋」を感じた瞬間、
そこから舌の奥へ
抹茶をすべらせてゆけば、
濃い苦味が優しく包まれたような
渋緑の抹茶味が、
とろとろと喉へと流れる。
*
濃厚な栗甘マロンペーストが
硬めの生クリームを押し上げる
モンブランを
前ぶれなく放り込むと、
抹茶の口が静かに受け入れて
栗甘を鮮やかに際立たせたかと思うと、
渋みは舌に立つように変わって、
少し舌の裏がわで味わうように
転がせば、舌の両脇から
奥へ、ふっくらとした
甘渋がふんわりとひろがる。
やがて栗と抹茶の
ほっくり甘と、
とろり甘渋が、
味のマーブルをつくり、
濃緑の底で
目も口もうっとりと、
とけゆく。
神奈川・小田原
「菜の花・ムー ンカフェ」の朝、
月のみちかけのように
ゆっくりとした時が流れる。