Web3で完全な自由は訪れない。支配されながらも支配に乗っかるという考え方。
「Web3とメタバースは人間を自由にするか」、佐々木 俊尚さんの新刊を読了です。
社会的にもバズワード化している内容だけに、「これは絶対に読まねば」と思い、速攻で購入して速攻で読了しました。
非常に読み応えのある一冊でした。さすが佐々木俊尚さん。
ネットであふれているような情報とは違って、Web3・メタバースの現時点での問題点、可能性を暴きつつ、人類がWeb3時代にどんな価値観を持って生きていくべきなのか?といった視点で、鋭く考察されているのがとても印象的でした。
本書を読んだ感想を綴っていきます。
Web3で「自由になれる」は幻想だ
Web3でよく言われているのは、あらゆるコミュニティ・プラットフォームは、これまで中央管理者として支配していた権力者から、個人が解放されることによって「自由になれる」といったことです。
しかし、その前向きな言葉とは裏腹に、コミュニティ・プラットフォームが適正に運営されるためには「権力による、ある一定の支配」が必要だということが、本書を読んでよくよく理解できました。
Web3といえば、GAFAMのようなビッグテック支配からの脱却。
そして、DAO(自立分散型組織)と呼ばれる、リーダー不在の組織がリーダーへの忖度なしに、所属しているメンバーが「それぞれ自由に発言して意思決定できる」といった前向きなイメージだけが一人歩きしていたりします。
しかし、「中央管理者」「リーダー」なくして、偏りが起こらずに適正にオペレーションが成り立つようなコミュニティやプラットフォームって「本当に存在するの?」と、以前から純粋に疑問に思っていました。
DAOで成功した例といえば、今のところ、ビットコインやNouns(ナウンズ)くらいではないでしょうか。
組織にはリーダーが必要である理由
確かに、中央管理者がいることによって、管理コストは発生しますし、決裁権は中央管理者に依存しているので、末端の人たちには組織としての透明性がなく、十分な恩恵が得られないケースも多いかもしれません。
このことからも、DAOのように平等でフラットな環境を求める人も多いのではないかと思います。
あのGoogleもフラットな組織を作るために、一時期ですが中間管理職を排除していたことがあるそうですが、その時の現場エンジニアの本音は「管理職を置いて欲しい」という要望が多かったそうです。その理由は・・。
どんな組織でも上が存在しない「完全なる自由」な状態を作るというのは、難しいのではないかと思います。
ビッグテックのおかげで無料で使えるサービスがある
また、私たちが日頃から無料で使っている「Google」「Facebook」「Twitter」「YouTube」などのプラットフォームは、ビッグテックに自分の個人情報を差し出しているからこそ、無料で使うことができています。
ビッグテック支配から脱却するということは、それらの有益なサービスは無料で使えなくなるでしょう。
多くの個人ユーザーのネット上での行動履歴といった個人情報があったからこそ、広告収益は成り立っていたわけですから、その収入源がなくなるということは、有料化するのは必然的ですよね。
Web3で言われる「個人情報を取り戻し、適正で自由な世界を作ろう」というスローガンは、「無料で使える」という世界を壊すことにもつながるのでしょう。
トークンエコノミーで支配に参加する時代
本書で語られていたのは、中央管理者に「支配されている」という状態を前提に、「自分自身も支配に参加している」といった意識を持つことが大切だと言う視点です。
「支配に参加している」という状態を可能にするのが、本書で語られている「トークンエコノミー」です。
詳しくは本書を読んでいただきたいですが、「トークンエコノミー」によって、コミュニティに所属している一人一人が「投資家」のようになることで、「自分はこのコミュニティに貢献している」という「承認欲求」を満たすことができます。
人と人とのつながりが希薄化している時代だからこそ、「誰かを応援したり」「誰かの役に立てている」といったことに価値が出てきているのだと感じます。
Web3は人間社会を大きく変えるテクノロジーである
本書を読んで、Web3におけるモヤモヤしていた部分が明確になりました。
Web3では支配からの脱却はできないけれども、支配に乗っかりながらも、主体性を持って組織に貢献するという意識が必要なのだと思います。
Web3界隈は「暗号資産」のネガティブなニュースが相次いでいるので、今の日本では「あやしい・・」というイメージが拡がっていますが、未来を良くする大きな可能性を秘めているテクノロジーでなのは間違いありません。
知らないものを怖がるのではなく、まずは知ろうと努力することが大切ですね。
暗号資産やNFTについても、実際に購入して触れてみるからこそ、その良さであったり、気を付けるポイントを理解することができます。
本書は、Web3について理解を深めたい人にとっておすすめの書籍ですので、気になる人はぜひ手にとってみてください。