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赤ちゃんの私を捨てた実の母親へ

今日は色々とあって、苦しくて苦しくてやりきれず、自分ひとりでは気持ちの整理がうまくつかないので、生みの親である母にこの苦しさを伝えてみようと思います。
決して届く手紙ではないけれど、何よりも自分が前を向いて生きるための何か一歩になればうれしい。

母へ

戸籍によればあなたは昭和30年生まれ、今年で69歳になるそうですね。
私があなたについて知っていることは、名前、生年月日、そして地元の有名企業のお嬢様だということ、そして私の母親であるということくらいです。
あなたがどんな人なのか、そんなことは全くわかりません。

あなたが映った写真を1度だけ見たことがあります。
結婚式の前撮りの写真だっとと思います。赤い和装を着たあなたは真っ白な顔をしていてすごくきれいでした。
その写真だけが私にとっての母親像であり、今でも私の頭に焼き付いています。

私は35歳になって初めて、父の妹から私が生まれた時の話を聞きました。
あなたは私を産みたくなかった。生まれてからも私に愛情をくれることなく、1歳になる前には離婚をし、児童養護施設に預けて私との関係を清算しようとしたと聞いています。
その時の赤ん坊の私はどんな表情をしていたか覚えていますか?
大人になった私は、今パソコンの前でその時と同じ表情をしています。

そんな別れをしたからか、あなたは私に養育費の一切も払ってくれず、私は引き取られた家庭でも貧困に苦しみ、就職するまではずいぶんお金に苦労させられました。
あなたの元夫の借金は35歳になった今でも肩代わりをしています。
高校を出た時には進路選択の余地もなく、陸上自衛隊に入隊せざるを得ませんでした。
あなたは地元の名士企業の長女。自分が産んだ子の養育費くらい払えないことはないはずです。せめて子どもを捨てるのなら、この世に私を産み落とした責任の一端くらいとってほしかったです。

私はあなたに捨てられて以降、あなたと会ったことも話したこともありません。私の父の祖父母が体の動く限り、私を一生懸命に育ててくれたおかげで、私はいまこうやって健康に生きることができています。
ただ原家族では、虐待、暴力、借金など多くの経験をし、今に至るまで大小様々なトラウマが残っています。
私を産んだあなたが、普通の家庭と同じように愛情を注いでくれ、かわいがってくれていれば、こんなトラウマを抱えて生きなくて済んだはずです。
あなたのやったことは立派な虐待であり犯罪です。あなたの無責任な言動によって、私の人生を壊してしまったのです。
そのことに気づいていますか?

あなたは知らないでしょうが、私は地元に帰るとよくあなた一族が経営する会社の前に行くことがあります。今はあなたの弟が社長をしているそうですね。そんな立派な社屋の前に車をとめて、何時間もボーと立ち空くしていたこともあります。
もしかすると、母親であるあなたが見れるかもしれない。そんなことを思っていたこともあります。結局一度もあなたを見れたことはありません。

そんなわたしですが、これまでずっとあなたの存在に蓋をし、あなたのことを考えないように過ごしてきました。
人前でも、母親がいなくても困ったことはないとか、会いたいと思ったことはないと言って自分の感情に蓋をし、強がって生きてきました。
母親の存在の蓋を開けると、会いたくなってしまうのが怖かったからです。
会いたいと思っても、会えない現実を肯定できないとき、私のアイデンティティがまた崩壊してしまう気がするからです。

最近、私は大切な妻と子と別居をすることになり、家族を失うかもしれない危機を迎えています。妻や子どもも苦しいけれど、同じように私も苦しい。
そんなとき、私の苦しみや寂しさを受け止めてくれる先がないことに気づきました。普通の人は親元に助けを求めることもよくわかりました。
お金を払えば心理カウンセリングを受けることはできるけれど、言ってみればそれはお金を介した取引に過ぎません。
私を無償に受け入れてくれる人、何があっても裏切らない人って世の中には結局親とか兄弟しかいない、その現実に直面しています。

今日は色々と私にとってつらいことが多くありました。
そんな時に家族と一緒に暮らしていた家に一人でいるのは本当に苦しい。
周りの人は、親のせいにするのは卑怯だとか、我慢や努力が足りないとか、同じ境遇でも立派にやっている人もいるといって、自分の立場を守りたがります。
信用して頼ろうと思っても、結局他人だし裏切られるのが怖いです。

今日ほど、親の血のつながった無償の愛情が欲しいと思ったことはありません。
私を捨てた母親でも、私の記憶の中に残っていない母親であっても、母親の前で思いっきり泣いて、苦しみをすべて口にして、一緒に泣いて抱きしめてほしい。ふとそう思ってしまいました。
私を捨てたことの謝罪なんていらないから、ただ子どもである私を思いっきり抱きしめてほしい。一緒に泣いてほしい。
だって私は母親であるあなたのお腹の中で芽生え、生まれてきたのだから。苦しい時には、本能的にあなたのお腹の中に帰りたくなるのです。

あなたは子どもである私を捨てることができたけれど、子である私はあなたの存在を捨てることも消すことも忘れることもできません。
自分を産んだ人がどんな人なのか分からない、それは子どもである私にとって、自分が何者であるのかというアイデンティティの核となる部分が毀損されているのと同じことなのです。

私はいま人生のどん底にいます。もう何回目のどん底でしょうか。
どん底に落ちる過程には、必ずと言っていいほど、あなたが私に愛情をくれなかった過去の傷が深く影響しています。
あなたが私を捨てたことは、35年の歳月を経ても、私の心には深く傷として刻まれています。そして私の家族にさえも深く影響を与えています。

そんな人生を歩むのは本当に生きづらいし、しんどいです。
私がどれだけ頑張っても変えられないものがあまりにも多すぎます。
今日のように落ち込んでしまうと、今すぐ蒸発してしまいたいとか、薬でも飲んで楽に死にたいと何度も思ってしまいます。

でも私は自ら命を絶つという選択も、蒸発して家族の前から行方を暗ますようなことは絶対にできません。
あなたにはそれがなぜだかわかりますか?

私にはあなたのように、いとも簡単に自分の家族を捨てて、自分の好きなようなワガママな生き方をするということができないからです。
あなたの血が入った私でさえも、それだけは本能的に拒絶するのです。

私には愛する妻がいます。そして大切な二人の子どもと愛猫が一匹います。
二人の子はあなたの孫です。わかりますか?
私の父としての一番の役割は、あなたと元夫が私に残した負の遺産を私の代で止め、私の大切な子どもたちに連鎖させないことだと考えています。
そのためには、妻と子どもに思いやりにあふれた温かく楽しい家庭を築くことが必要です。
残念なことに、私はあなたという存在に蓋をし続けた結果、あなたが残した負の遺産に気づかず、生きづらさを抱えたまま、今まさに妻を苦しめてしまっています。私がサインをすれば離婚が成立するかもしれないどん底の状況です。

私はあなたのような無責任で自分勝手な人生を送りたくありません。
私を選んでくれた妻と、私たち夫婦を選んで生まれてきてくれた子どもたちと愛猫を簡単に見捨てるようなことはできません。
そのために35年間、母親の存在に蓋をし、食べるものが無くなってもあなたに頼らずに必死に生き抜いてきたのです。

最後になりますが、私がこの手紙で一番書きたかったことを改めて残します。
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いま私がいちばんほしいもの。それは「苦しい時に泣いて逃げられる場所」
この先を生きるのがつらくなったり、いまこの瞬間を生きていることすらつらくなったとき、思いっきり泣くことができて、私という一人の人間を無償に受け止めてもらえる場所がほしい。
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それをあなたに求めるのは無理なのはよくわかっています。
でもお盆には実家に戻って思いっきり泣いてわがままを言ってみたかった。

私の「苦しい時に泣いて逃げられる場所」は、私自身しかいません。
私が私の安全基地になって、トラウマを乗り越えていくほかはありません。
私にはその覚悟があります。
ただ文字に書いて、あなたには伝えておきたかった。ただそれだけです。




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