新・地図のない旅 II (五木 寛之)
(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目についたので手に取ってみました。
五木寛之さんのエッセイ本をみると、いまだについ手が伸びてしまいます。「地図のない旅」というタイトルの本ははるか昔読んだ記憶があるのですが、長い年月を経ての “新” 版です。
先に読んだのは「Ⅰ」で、こちらは同時期に出版された「続編」になります。
内容は、「Ⅰ」と同じく、特に目新しい視点があるわけではないのですが、それでもやはり気になるフレーズには出会えますね。
それら中から私の関心を惹いたくだりをいくつか覚えとして書き留めておきます。
まずは、「悲しいときに歌う歌」との小文で心を止めたくだりです。
ここでの五木さんが語る心情は、先に読んだ「NHKラジオ深夜便 絶望名言」という本のメッセージにも通底しているんですね。
励ましが重荷に感じるほどの悲しみ、そうなんでしょう。
ときおり「この歌を聞いて元気をもらった」とか「励まされた」といった話を聞きますが、考えてみるに私は、何か “歌” を聞いてそんな気持ちになったことは一度もありません。“懐かしさ” が最もよく浮かぶ感情ですね。
次は、「地方文学賞について」の章。
各地で主催されている “文学賞” ですが、それらの淘汰が進む中、その選考課程の真剣さについて、五木さんはこう記しています。
金沢市主催の泉鏡花文学賞、ある年の選考の場での情景です。
居並ぶ錚々たる顔ぶれが生む緊迫した空気、そしてその間の有言無言のやりとり、これはなかなかに痺れるシーンですね。
そして、最後にもうひとつ。
本書のタイトルにちなんで、「あとがき」に五木さんはこう記しています。
いい歳になってくると、こういった感覚がほんの少しですが “我がこと” として思い至るようになってきました。
このエッセイのシリーズはもう1冊出版予定とのこと。また、楽しみに読んでみましょう。