Think Simple ― アップルを生みだす熱狂的哲学 (ケン・シーガル)
(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)
Think Brutal
著者のケン・シーガル氏は、アップルの印象的なキャンペーンである「Think Different」に携わった有名なクリエイティブ・ディレクターです。
そのシーガル氏が、アップルの様々な経営姿勢に通底する「シンプル」という哲学を豊富な具体例を示しながら紹介していきます。
本書では、10の章でアップルの「シンプル」という哲学のエッセンスを説明しています。それらの章で語られている事実やコメントの中から印象に残ったものを以下に書き留めておきます。
まず、「第1章 Think Brutal 容赦なく伝える」の中で言及されている誰しも経験のあるシーンです。
アップルではこういった不明瞭さはないといいます。自分の立ち位置や目標が明確だからです。
「人の言ったことの真意をあれこれと詮索する」ことほど無駄なことはありません。詮索するぐらいなら直接確かめればいいのです。もちろん、そもそも不明瞭な話をせず、常に正直に率直に語っていれば、「詮索」の必要すらなくなるというわけです。
「シンプル」は妥協の余地のない「完全」を求めます。
こういったシーンは私自身も数多く経験したことがあります。とりあえずスモールスタートで次のステップに進ませようとか、ともかくトライヤルとしてやってみようとか・・・、こういう物事の進め方はアップルでは通用しないようです。
停滞から脱却するための「複雑さ」は確かにひとつの現実の姿ではありますが、それは目指すべき理想ではありません。
Think ○○
著者のケン・シーガル氏は、Apple社のプロモーションを担当する広告会社のクリエイティブ・ディレクターという立場なので、良し悪しはともかく、一つの方向からみたジョブズ氏像を語っています。
ただ、もちろん大半は、ジョブズ氏を取り上げた多くの著作で紹介されているものと軌を一にするものです。
たとえば、「第7章 Think Casual カジュアルに話し合う」で取り上げられたSimpleに反する「気に入らないプレゼン」のくだりです。
至れり尽くせりのお化粧を施したプレゼンは、アイデアそのもののブラッシュアップよりも、その装飾に時間を費やしているかのうように感じられます。そもそも、パワーの使いどころが分かっていないんじゃないの?と思ってしまうのです。
そうですね、この感覚はとてもよく分かります。
こういった私も同調できる部分がある反面、Appleの思想の中にはどうしてシンパシーを感じないところがあります。
私もAppleの製品はいくつか持っています。が、(好みの違いかもしれませんが、)私としては、必ずしもそのUIに満足してはいません。過度なSimpleさを追究しているが故に、どこかに無理が感じられるのです。
私はAppleの熱狂的なファンではありません。Appleもone of themとの立場です。この「第8章 Think Human 人間を中心にする」の中での著者のコメントは、まさに私の抱いている印象を言い表していますね。
さて、本書では、Appleの基本哲学である「Simple」の具体的要素として、
の10の「Think ○○」を挙げています。
その一つひとつを独立してみてもとても有用なアドバイスになっているのですが、これらは今の社会や企業のあり様の中ではどうやら異端のようです。それゆえに「Think Different」というAppleのメッセージがが強烈なインパクトをもって受け入れられたのです。
この「Think Different」の中核に位置するのが「Simple」というコンセプトですが、それを最もよく説明していると私が感じたフレーズを最後にご紹介しておきます。
妥協を許さず、余計な装飾を削ぎ落として「本質」を突き詰めるこだわりと厳しさの姿勢です。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?