昭和・戦争・失敗の本質 (半藤 一利)
最近は「昭和史」で有名な半藤一利氏ですが、本書は2009年に発刊された短文集です。採録されている文章は、書かれた時期が古いもので1973年、一番新しいものは2007年と30年以上の年月を跨いでいます。
舞台となるのは第二次世界大戦。戦争末期の何ともやり場のない権力の独善・独歩を、半藤氏流の語り口で怒りの心情を籠めて綴っていきます。
本書では、様々な戦争末期のエピソードが紹介されていますが、特に、「日本分割統治」をめぐる画策を描いた章「幻のソ連の『日本本土侵攻計画』」で明らかにされた終戦の月、8月に繰り広げられた米ソ間の交渉過程は息詰まるものがありました。
ルーズベルトの死去によるトルーマン大統領の誕生が、そして当時のアメリカ駐ソ大使ハリマンの存在が、間一髪のところで日本の分割統治を回避させたのでした。
この間、避けられるべくして苦難に遭われた人々は100万人を越えるでしょう。悲しくも愚かしいことです。あの時期にあの人がいたことが、あの決断をしたことが、あの不作為が・・・、人の歴史の偶発性と不可逆性を考えさせられます。
まさに65年前(注:本投稿は2010年9月に投稿したものの再録です)の今が舞台、8月、戦争と平和を考えるこの時期に相応しい本です。
4 (注:本書は改訂されて、現在は「昭和と日本人 失敗の本質」という書名で発行されています)
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