経営思考の「補助線」 (御立 尚資)
御立尚資氏の著作は、以前「戦略「脳」を鍛える」を読んだことがあります。平易な書きぶりで分りやすい著作でした。
さて、本書は、日経ビジネスオンラインに連載されたコラムをベースに加筆修正して、1冊の本にまとめたものとのこと、ここ1~2年の経済状況をとりあげた「ビジネス・エッセイ」です。
「潮目の変化」「その変化への対応」「変化を乗り切るリーダーシップ」という大きな3つのテーマにそって、御立氏が、自在に語ります。
その中で、いくつか私の興味を惹いたところを覚えに記しておきます。
まず、ちょっと前に流行った「CRM(Customer Relationship Management)」についてです。
CRMの効用に対する懐疑ではなく、新たな切り口からのCRMの活用を提案しています。
CRMデータにもとづくクロスセル・アップセルの対象範囲を自分の製品/サービスに限定しないという発想です。うまくパートナリングが組めれば、お客様にもメリットのあるWIN-WINの仕掛けができますね。
次は、「規模のリスク」について。
これは、昨今の金融システムに関する話題のなかで指摘されています。
規模が大きくなると、その対応には想定以上の「安全係数」をかけておく必要があるとの示唆です。
最後は、自己の資産のみならず「他者の資産」を活用しようという視座の転換の例です。
カーシェアリングやグリッドコンピューティング、スマートグリッドのように他者の遊休資産や余剰資源を活用してシステム全体としての生産性の向上を図るというアイデアです。
これらは、省資源・地球環境保護という世界的なトレンドにも合致したもので、ITの進歩・ネットワーク化の進展にともない実現性は急速に拡大しています。