後鳥羽伝説殺人事件 (内田 康夫)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
かなり以前によく読んでいた内田康夫さんの “浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。
今回は “広島” です。
ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、この作品の舞台は広島といっても出張先のある「広島市内」ではなく、県の東部の「尾道市」や県北の「三次市」周辺ですから、馴染みの場所は登場しませんでした。
それでも今回手に取ったのは、この作品が記念すべきシリーズ第1作目だというところにあります。
“浅見光彦シリーズ” も、最初は「単発もの」のつもりだったとのこと、それだけに内田さんの筆も結構 “前のめり感” が強いですね。
謎解きの舞台は芝居がかっていますし、光彦自らが “兄の威光” をかざす行動をとるのも少々強引に感じました。また、登場人物の外形的特徴が今ならちょっと避けるであろう表現で繰り返されています。このあたり時間の流れを感じますが、正直、読んでいて気持ちのいいものではありませんね。少々残念です。
しかしながら、その正統派推理小説としての緻密な構成力・論理展開力は流石に秀逸である点は揺るぐものではありません。
本作の評価が高かったので「シリーズ化」が検討されたとのことですが、そうなると「第二作目」がどんなトーンで描かれ、その出来栄えはいかなる程度だったのか確かめてみたい気がします。
執筆順では「平家伝説殺人事件」になるようで、図書館にあれば借りて読んでみようと思います。
ちなみに、最初は、陽一郎さんの役職は「警察庁警備局公安部長」なんですね。
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