昭和の教科書とこんなに違う 驚きの日本史講座 (河合 敦)
(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)
「富本銭」って何?、数年前(注:当時)の娘たちの受験期に初めて目に入ったのですが・・・、私が中高生のころ、日本最古の貨幣といえば疑いもなく「和同開珎」でした。
本書では、近年の日本史研究によって明らかにされた過去の教科書の記述を覆す数々の史実が紹介されています。
近年の研究成果といっても、それは、X線写真や放射性炭素年代測定といった科学的手法によるものもあれば、新たな発掘・発見といった従来型作業によるものもあります。いずれにしても、明確な「物証」が従来の歴史認識・解釈を正していったのです。
これは、特に「古代」の史実についてはそうでした。
そうした閉塞状況を大きく変えたのが「木簡」の登場だったのですが、木簡が日本で最初に発見されたのは1961年(平城京跡)だったのだそうです。結構最近なんですね。
こういった生活感のある発見の方が、実は結構興味深い内容のものがあったりしますね。たとえば、7世紀後半、古墳時代末期にはすでに「九九」が使われていたのだそうです。
これら物証によるもの以外に、解釈の変化によって教科書の記述のニュアンスが変わってきている例もあるようです。
たとえば、徳川5代将軍綱吉。
“天下の悪法”とされている「生類憐みの令」を制定したことでその治世の評価は低いものでしたが、最近の研究では再考されつつあるとのこと。
そもそも「教科書」の記述の多くは、その執筆当時の研究者間の「通説」が採り上げられたのものに過ぎませんから、当然、研究が進んでいくと、新たな「真実」が明らかになっていくことは当たり前のことでもあります。
さらに「歴史(正史)」の場合、史実の存在そのものや史実の評価は、その当時の為政者が“望ましいと考える歴史認識”に左右されることも大いにあるわけですから、そこには確信犯的誤謬は付き物と考えておいた方がいいのでしょう。
さて、本書を読み通してですが、私が勝手に期待していた内容とはかなり隔たりがあったというのが正直な感想ですね。
たとえば、聖徳太子や足利尊氏を描いたとされる絵は実際は別人物だという話はよく聞きますが、それがどういう契機・経緯で判明したのか、それでは描かれた人物は本当は誰なのか、何故その絵が間違った解釈をされたのか・・・。そういった研究プロセスや成果を知りたかったのですが、そのあたりはほとんど説明されていません。
本書と同じような切り口での史実の検証本は他にもいくつも出版されているので、また別の本を読んでみることにしましょう。