柳井正 わがドラッカー流経営論 (NHK「仕事学のすすめ」制作班)
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏が、ドラッカーの教えを経営に生かしているという話は有名ですね。
本書は、NHKの「仕事学のすすめ」というテレビ番組で取り上げられた柳井氏の経営をテーマにした語りを活字に起こしたものです。
柳井氏のお話の中から、ドラッカーに敷衍しているくだりをいくつかご紹介します。
まずは、ドラッカーの思想の根本にある「企業(事業)の目的」についてです。ここで登場するキーコンセプトは「顧客の創造」です。
もうひとつ、こちらは、「顧客の創造」ほどポピュラーではありませんが、「働き方」に関するドラッカーらしい着眼の示唆です。
制約条件を明らかにして、それを行動のスタートにするという実践的な提言です。
さて、本書を読んでみての感想ですが、正直なところ、かなり期待と違っていたという印象でした。
テレビでの語りの書き起こしなので仕方ないのでしょうが、当代一流の経営者の経営論だと思って読むと、多くの人はガッカリするのではないでしょうか。
本書の最終章には、こういうくだりが載っています。
こういう表明にごく僅かな一端を垣間見ることができますが、おそらく、柳井氏のドラッカー思想の理解はもっともっと広汎でかつ深く、それを礎にした氏の経営理念や経営判断は、この本で開陳された程度のものではないはずです。
「顧客の創造」「知識労働者」というコンセプトについての語りに大半を割いた内容では、本書のタイトルは、(「羊頭狗肉」とまでは言いませんが、)ちょっと大仰かなと思いました。