ビッグバン以来150億年、150億光年という時空のスケールで宇宙・地球・生命の歴史を再整理し、そのモデルから今までの文明論を見直すという試みの本です。
宇宙に「視座」を移すと、人間を含め地球上の事象を「俯瞰的」「相対的」に見ることになります。
こういった見方は、全体として認識するための「総合化」を目指した新たな方法論を必要とします。これは、デカルトやベーコン以来の「二元論」や「要素還元主義」に替わるべきものです。
著者は、この「総合化」のための方法論として、とりあえず「システム」と「歴史」という視点での考察を提案しています。
「システム」は、その構成要素と構成要素間の連関で成り立っています。
「人間圏」の成立は、「狩猟採集」から「農耕牧畜」への移行がその契機となりました。
狩猟牧畜の時代は、人類はまだ生物圏内の一生物種に過ぎない時代であって、地球システム論的には意味をもっていません。しかしながら、農耕牧畜の時代になると、人類は生物圏から離れ新たに人間圏という独立したシステム構成要素を構築することになるのです。
農耕牧畜が始まると、人は集団である地域に定住するようになります。集落が村に都市にと変貌していきますが、そういう共同体を構築・維持していくためには、その構成員間で「共同の意識」をもつことが必要となります。
この共同意識をもつ条件として、著者は脳の発達も指摘しています。
本書で主張されている「人間圏」という捉え方は、以前読んだ今道友信氏の「エコエティカ」で説かれた「生圏倫理学」(=人類の生息圏の規模で考える倫理)のスコープにも似ているようです。
最後に、本書を読んで特に興味をいだいたフレーズを2つ、覚えとして記しておきます。
ひとつは「生き残り」の条件について。
この指摘は、たいへん示唆に富んでいますね。
もうひとつは「自然科学者の知の獲得」についてです。
こちらは、ちょっと寂しい指摘です。。