芥川賞作家の小川洋子氏が、7人の学者・専門家のもとを訪れ、興味の赴くままに科学の世界を尋ね巡ります。そこには、必ず予想外の大きな驚きがあり、知れば知るほど人知を超えた自然の力に圧倒されるのです。
小川氏が選んだ対象は、必ずしもポピュラーなものではありません。むしろ、普段は晴れやかな光を浴びないようなテーマです。しかしながら、むしろそれだからこそ、新たな発見もあり、その発見に導いてくれる研究者の方々の真摯な姿勢に惹かれるのだと思います。
それらの魅力的な研究者のお一人、筑波大学名誉教授村上和雄氏の、科学者ならではの驚きの言葉です。
科学者は理詰めで物事を考えます。しかしながら、その対象ははるかに深く大きな存在です。そういう対象を摑まえるためには、尋常の思考の連鎖では不可能なのでしょう。
村上氏は、「真理の発見」についてこう語っています。
豊かな情緒は、まさにその人の人柄に表れるものです。
東京大学総合研究博物館教授の遠藤秀紀氏は、科学に対して謙虚です。
自らの力への自負はもちつつも、過去から未来への知の流れの中で、自らの位置づけを客観化しています。