会社の方のお勧め本として紹介されていたので読んでみました。
清の初期の皇帝といえば、康熙帝・乾隆帝が有名ですが、本書は、その両帝に挟まれた第五代皇帝雍正帝(1678~1735)を採り上げた著作です。
雍正帝は、皇帝としての在位期間は短かったのですが、独創的な施策に精力的に取り組み、清朝の専制君主体制をより強固なものにしました。
雍正帝の独裁制は、皇帝が直接人民を統治することを目指しました。皇帝の取り巻きたる官僚政治を否定したのです。
官僚に任せない政治は皇帝自らが手を下す政治でした。雍正帝は、地方統治を地方官との間の非公式の皇帝直通文書(摺奏)のやりとりで実現しようとしました。地方官からのすべての摺奏に自ら朱墨で意見を書きこんで送り返す(硃批)というやり方です。
専制君主にとって、自らの権力の示し方で政治の懐の深さが表れます。強圧的な態度のみが権力の使い方ではありません。
皇帝に対する謀反を勧めた曾静に対する雍正帝の度量です。
独裁制であることが、即ち、人民を苦しめるものであるとは限りません。独裁という政治形態であっても “善き君主” は存在し得るのです。
本書で顕かにされた雍正帝は、独裁君主でありながら自らに厳しく有言実行を旨としていました。近世、洋の東西を問わず専制君主は多く現われましたが、その中でも、とてもユニークで興味深い人物だと言えるでしょう。
これが、著者が描いた雍正帝像でした。