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妻と別れたい男たち (三浦 展)

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

 ちょっと心情的には複雑なのですが、妻が「ザッと読んだので」といって渡してくれた本です。
 ただ、内容は、かなり「?」なものでした。基本的には、首都圏1都3県在住の40~64歳の男性2201名へのインターネット調査をベースにした考察です。

 たとえば、こういった分析結果が書かれています。

(p86より引用) 離婚したいと思いやすい夫はこんな人
・自分の学歴が高卒以下
・自分の職業が自由業、自営業
・妻が結婚出産後も継続して働いている
・妻が自由業、自営業

 さて、この結果をどう評価しましょう。
 前述したように、調査の母集団は首都圏の男性のみ。しかも、2000人程度のサンプルに過ぎません。学歴とか職業とかの説明変数も大雑把で、結果の評価にあたっても、有意水準の仮説検定を行っているようには見えません。

 たとえば、第三章「夫婦の地域格差」では、1都3県を26ブロックに分けて考察していますが、2000名程度のサンプルを26に分けると平均して80名程度。それで何か有意な傾向を求めようとするのが無理な話です。ブロックによっては一桁のサンプルの場合もあるようです。

(p146より引用) 川越になぜ隠れ家を持ちたい人が多いのかは、よくわからない。

と著者もコメントしていますが、それは当たり前でしょう。あまりにも統計的方法論が粗雑過ぎます。

(p94より引用) かつての標準世帯を維持することが今の社会では難しくなってきたからこそ、離婚が増えたとも言えるだろう。

とのコメントに表れているように、著者は本テーマを「階層問題」としてとらえようとしているようですが、示されているデータでは十分な説得力は(残念ながら)ないですね。

 そして、最終章で、家族や会社の同僚以外に友人を作れと主張されると、正直、これまでの立論?はなんだったのかという気になります。
 久しぶりに、とんでもなく内容・構成ともに貧弱な著作を読んでしまいました・・・。



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