中東危機がわかれば世界がわかる (中川浩一)
いつも利用している図書館の新着本の棚で目についた本です。
イスラエルとハマスとの間の「ガザ紛争」に代表されるように、中東紛争は拠って立つところにより、その善悪、正否の判断は全く異なります。
それらの争点を俯瞰した視座から捉えるには中東地域における歴史的・政治的は背景の理解が不可欠なのですが、私の場合、そのあたりの知識は、遥か昔の学生時代の「世界史の教科書」レベルでしかありませんし、その僅かな知識も恥ずかしながら急激に減衰しています。
著者の中川浩一さんは外務官僚として在イスラエル日本国大使館、対パレスチナ日本政府代表事務所等、現地での豊富な勤務経験を有しています。その中川さんによる「中東政治状況の入門書」は基礎的な知識から整理し直すにはとても有用でした。
いくつもの重要な指摘の中から、特に私の印象に残ったところをひとつ覚えとして書き留めておきます。
現時点、進行形の紛争である「ガザ紛争」にも直結する「パレスチナ問題への日本の関わり方」についてです。
この紛争における対応の欧米主要国の基本スタンスは「イスラエル支持」ですが、日本の拠って立つべきスタンスについて中川さんはこう指摘しています。
“バランスが重要” との考えですが、このところの日本政府の対応は、少なくともアラブ諸国からは「イスラエル寄り」に見えるでしょう。
アメリカがパレスチナ問題に消極的だったバイデン政権からトランプ政権に移行し、早速「停戦・人質解放」が進み始め、さらには「ガザの住民全員移住」といった奇天烈?ともいうべき提案もなされました。
もちろん、発信源がトランプ大統領によるアクションについては今後とも流動的で不確定要素大ですから、日本の基本的対応は、パレスチナやアラブ諸国も反応も踏まえつつ、今まで以上に地に足の着いたものである必要がありますね。
現実的は、ある程度の政治的配慮がなされるとしても、ともかく何より関係各国・組織が「人道上の問題」の解決に最優先で取り組むことを期待しますし、アラブ諸国とも一定の関係性を築いてきた日本としてもその進展に大いに寄与して欲しいと思いますが、さて、どうなるでしょう・・・。
何はともあれ、まずは何とか、人々の安寧が一刻も早く図られますように。