秘闘 : 私の「コロナ戦争」全記録 (岡田 晴恵)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
いつも聞いている大竹まことさんのpodcast番組に著者の岡田晴恵さんがゲスト出演していて、本書も話題として取り上げられていました。
ご存じのとおり岡田さんは現在は白鷗大学教授ですが、国立感染症研究所で感染症パンデミック対策に従事した経歴を持っています。
新型コロナウィルス感染症発生当初からテレビのワイドショーや報道番組を中心にマスコミに登場する機会も多く、その露出の多さ故か、様々なプレッシャーも受けて来られました。それらの中には、学術的な観点からの正当な批判・反論もあれば、謂れのない中傷も含まれていたことだと思います。
本書は、その岡田さん自身が著したものなので、本人のみが知る真実もあれば、少々バイアスのかかった表現も含まれていることでしょう。
その点を踏まえつつ、本書で紹介されている新型コロナウィルス感染症対策における検討や実行にあたっての実態をいくつか書き留めておきます。
まずはイントロ的なコメントから。
中国武漢で感染症の発生が発覚した当初、厚労省から政治家への説明役は岡部信彦氏(川崎市健康安全研究所・所長)が担っていたと伝えられていました。
ここに登場する田代氏とは、元国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の田代眞人氏です。ちなみに、岡部氏は、新型コロナウィルス感染症拡大を機に、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード・構成員、内閣官房参与等にも就任しています。
そして、この新型コロナウィルス感染症対策の検討にあたって、いわゆる「専門家」が続々と登場してきます。
2020年2月、まず組織されたのは「新型コロナウィルス感染症対策専門家会議」でした。
そして、予想どおり “専門家” の方々は、自らの専門外の “忖度” をし始めました。
大阪健康安全基盤研究所の奥野良信理事長は、ワクチン接種に関する議論の様子をこう語ったそうです。
こういった状況の中、的外れ?な施策を進める分科会・専門家会議のメンバーに対して発せられた田代氏(元国立感染症研究所)の火を噴くような激烈な言葉です。
第4波、2021年のゴールデンウィークのころ、岡田さんの言葉は、コロナ禍への対応スタンスの相違を越えて響きます。
さて、本書を読み終えての感想です。
とても興味深い様々なエピソードが紹介されていましたが、どうにも気になったところ。今回の新型コロナウィルス対策の責任者たる厚労大臣との関わり(やりとり)の部分です。
これだけ専門性も高く国民生活に極めて大きな影響を与える課題の検討において、この本で語られているような個人レベルの情報交換が実質的に相当のウェイトをもっているのだとしたら、やはりそれは検討の「仕組み」や「方法」が間違っているのだろうと思います。
本書にあるように「公式の検討機関」がその人選の不具合で正しく機能していないのなら、リーダーたる人間が決断すべきことは、メンバー変更等の人事も含む検討体制の抜本改革です。
「あの人たちの言うことは・・・」と内輪で言い合っているようでは全くダメでしょう。機能不全の愚痴をこぼす時ですか?
今、私たちが直面しているのは、そういった茶番が許される程度の危機ではありません。