(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)
現代人類共通の祖先を探究する遺伝子研究がテーマです。
キーとなる手がかりは「ミトコンドリアDNA」。
ミトコンドリアは真核生物の細胞小器官で、独自のDNA(ミトコンドリアDNA)を持ち、分裂・増殖します。当然、卵子の細胞質にも存在しますが、この卵子の中にあったミトコンドリアは受精後の細胞分裂においても引き継がれていきます。即ち、ミトコンドリアDNAは常に母性遺伝するのです。
この性質を利用して、著者は、現代ヨーロッパ人の母系祖先を辿っていきました。
今生きているほとんどすべてのヨーロッパ人は、7人のいずれかと遺伝的なつながりがあるというのです。
この探究の過程を綴った本書の前半部分は、なかなか興味深いものがありましたね。古代人の化石からDNAを抽出する場面などは映画にでもできると思いました。
そして、この一連の研究から、世界60億人ひとり一人の母系祖先も突き止めらています。
彼女は「ミトコンドリア・イヴ」と名付けられました。
さらに、本書の最後の方では、日本人についての分析の記述があります。
最終章「自分とは?」の中での著者のメッセージは、とても大事だと思います。
それは、哲学的な理念ではなく、遺伝学的な事実なのです。そして、その事実は理念としても活かされなくてはなりません。