思考の方法学 (栗田 治)
(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。
こういったタイトルに代表されるような「●●思考」をテーマにした本は、いままでもあれこれと読んでいます。
今の私の立場では、もう目の前の仕事に活用するといったシーンはほとんど考えられなくなっているのですが、やはりちょっと気になります。
実態を把握・整理し論理的アプローチにより事象や対策を評価・判断するには、一段階抽象化した「モデル」を設定することは有益です。
本書は、その「モデル分析」の具体的作法を紹介したもので、それそれの章ごとに興味深い気づきはありましたが、それらの中から特に印象に残ったところを1、2覚えとして書き留めておきます。
まずは著者の栗田治さんが本書で紹介している「モデル」の定義を端的に示しているくだり。
この「思考の枠組み」にはいくつかのパターンがあり、栗田さんはそれらを “対概念” として分類しています。
「定量的モデル/定性的モデル」「普遍的法則を追求するモデル/個性的な個体を把握するモデル」「マクロモデル/ミクロモデル」「静的モデル/動的モデル」ですが、これらの概念を組み合わせることにより2次元や3次元のマトリックスを作り、様々なエンティティの位置づけを整理していくのです。
こういった丁寧な「モデル分析の基本」の紹介に続いて、栗田さんは “モデル分析における重要な留意点” を示しています。
この指摘はとても重要ですね。
栗田さんは “価値観によって異なるものの見方” の例として、ある社会的課題に対する対応策を決定するにあたって、3つの立ち位置(価値観)を挙げています。
「問題の所有者」が、この中のどの価値観に拠って立つかで、採用される対応策はまったく異なるものになります。
はるか以前に私が参加した研修セミナーで、妹尾堅一郎(現)特定非営利活動法人産学連携推進機構理事長が「刑務所新設プロジェクト」を例に “コンセプト” の重要性をお話しされていたところと同根のポイントですね。
この “価値観の明確化” が疎かで利害関係者の間で同床異夢の状態だと、いかにしっかりしたモデル分析のプロセスを経たところで、最後の結論に至るフェーズでその検討は空中分解してしまうでしょう。