駅名で読む江戸・東京 (大石 学)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
10年以上前に、「続編」は読んでいます。今回は、思い立って1作目を手に取ってみました。
こういった「土地にまつわる蘊蓄もの」は気楽に読めて楽しめますね。
登場する地名はさすがに全部旧知のものばかりですが、その歴史的背景は初めて耳にするものが多く、それぞれに面白いものでした。
考えてみれば当たり前なのですが、関東地方の土地もかなり古くからの歴史があるんですね。
今、私が住んでいる東京の多摩地方でいっても、「国分寺」は、奈良時代に聖武天皇の詔により日本各地に建立された「武蔵国国分寺」の所在地ですし、「聖蹟桜ヶ丘」は「小野小町」との関わりがあるそうです。
ちなみに、本書では、それぞれの項で取り上げた「地名の由来」についても触れられています。
よく、“以前の地形が地名に残っている” と言われますが、それらしいものの中にも「そうでもないケースもそこそこある」ようです。
たとえば、「渋谷」。
明らかに実際の渋谷の地形をみると多数の坂に囲まれた「谷底」です。
ただ、「渋谷」の地名の源ですが、本書によると、「水サビのある低湿地」だからという説はむしろ傍流で、「塩谷の里(塩谷)」が「渋谷」に転じたとの説や相模国の渋谷重家一族が移り住んだためといった説の方が有力なのだそうです。
もうひとつ、「千駄ヶ谷」。
こちらは「1000駄の萱を刈り取っていた所」というところから「千駄之萱村」と言われたのが始まりだったとのこと。
今の「表記」に定着する過程では「地形」が意識されたことはあったのでしょうが、ストレートな連関があるか否かは区々のようですね。