絶対にゆるまないネジ ― 小さな会社が「世界一」になる方法 (若林 克彦)
従業員は50名弱の東大阪の中小企業・ハードロック工業。
絶対に緩まないネジ「ハードロックナット」で世界的に注目されている会社です。
本書は、同社の創業者若林克彦社長が語るとても興味深い体験談です。
若林社長が説く中小企業における成功の秘訣は、「アイデアからオンリーワン商品をつくること」でした。
このアイデアを思いつくのも、顧客のニーズを知ることがスタートになります。
このあたりまでは、誰もが気づいていることですが、若林社長は、思いついたアイデアをすぐに形にしてみるのだそうです。メモに残す、図面に起こす、試作品を作る・・・、考えるだけではなく即行動する。この姿勢が決定的に違います。
本書では、こういった若林社長の悪戦苦闘の軌跡が、さまざまなエピソードとともに語られていきます。
その中で、ちょっと個人的に興味をもったところをご紹介します。
1980年代前半、若林社長と営業担当であり実弟の関常務がハードロックナットを電電公社(当時)に売り込んだときの話です。
電電公社の鉄塔には緩みが許されないボルト・ナットが求められていました。二人の熱心な売り込みが奏功して、電電公社の担当者がハードロック工業の本社工場を訪れることになったときの1シーンです。そのころの工場は貸倉庫を改造した小さなものでした。
ちなみに、1980年代前半といえばちょうど私が入社したころです。いかにも当時の電電公社らしいやりとりですね。
さて、若林社長自らの陣頭指揮による決して諦めない粘り強い営業努力とたゆまぬ商品改良のおかげで、ハードロックナットは「大ヒット商品」となりました。
そして、さらに様々な困難を乗り越え「ロングセラー商品」へと育っていきました。とりわけ中小企業にとっては「ロングセラー商品」の有無がまさに死活問題となります。幹となる商品を持たないと安定的な経営ができないのです。
「ロングセラー商品」を産み出すための最も重要なポイントは何か、それは「情熱」だと若林社長は考えています。
ハードロック工業では「開発」はもちろん「営業」も自前です。安易に販社に頼りません。地道に諦めず、自分たちの力で挑戦し続けた努力が、輝かしい結果をもたらしたのです。
最後に、本書を読んで、改めて心せねばと感じたくだりを書き留めておきます。
言葉だけでいえば、多くのビジネス書に書かれているフレーズです。
しかしながら、まさに、その強い信念で、0(ゼロ)からのスタートでオンリーワン商品を開発し、世界的にも賞賛される優良企業をつくりあげた若林社長の言葉だけに、その重みには格別のものがあるのです。