(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)
会社帰りにときどき立ち寄る図書館の新着書の棚で目に付いた本です。
採録されているのは、幕末、欧米に派遣された
の各使節団の記録です。
そこには、訪問先にて、初めて日本人を見る当地の人々、初めて異国の人・風俗・文化に触れるサムライたち、それぞれの驚きの姿が鮮明に描かれています。
それらの中には、当時の日本の社会慣習に対する懐疑を惹起させたような卓越した気付きもありました。
日米修好通商条約批准書の交換のため万延元年(1860年)に渡米した第一回目の使節団員玉虫左太夫誼茂の渡米日録にはこう記されていました。
彼がサンフランシスコに着いたときの記録です。
また、初めて議事堂にて議会模様を見たときの感想にも興味深いものがありました。
使節団副使村垣淡路守範正の日記の記述です。
もちろん言葉が分からないということもあるのですが、議場での演説模様が「魚河岸」のようというのも傑作です。
とはいえ、そういう喧しい議会に閉口しつつも、当時の日本は「議会制」という仕組みやその意義など全く理解していませんでした。
遣欧使節竹内下野守一行がオランダの議会を傍聴した際も、こういった様子でした。
さて、著者が紹介している4つの旅行譚を読む限り、それぞれ欧米数都市を巡った使節団に対する現地の人々の反応は熱狂的で頗る好意的でした。しかしながら、やはり一部には、使節一行に対する無作法な行為や偏見もあったようです。
それに触れたアメリカの書物の一節です。
米国人の不心得な行動に対し自らの態度を顧みるこの書の著者の主張は、“ジャーナリズムの良識” が伺えるものとして流石と言わざるを得ません。