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外資系トップの仕事力 ― 経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか (ISSコンサルティング)

経営プロフェッショナルの言葉

 今回読んだ本のタイトルは、「外資系トップの仕事力」。
 サブタイトル-「経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか」-の方が、内容をよく表しています。外資系企業のトップマネジメント12名の方々のインタビューをコンパクトにまとめたものです。

 私がとやかくコメントを加えるよりは、登場している方々のコメントをそのままご紹介します。

 まずは、「経営のプロフェッショナル」としての言葉です。

 最初に登場するのは、日本コカコーラの魚谷雅彦氏
 常に気をつけるべき「発想の基本」です。

(p19より引用) 今も気をつけているのは、「これはこう決まっているから」という発想に陥らないこと。これはどんな企業でも陥る危険性がある。

 日本オラクルの新宅正明氏は、「変化への対応」の重要性を話します。(ちなみに、数年前、ORACLEの新しいミドルウェアの発表イベントで新宅氏のプレゼンテーションを聞きましたが、生粋の関西人でしたね)

(p63より引用) 新しい課題に対してきちっとプリンシプルを持って、質のいい判断をする。判断が間違ったらすぐに戻る。それが大事。僕の次のCEOも当然、過去を踏襲する必要はない。踏襲すべきなのは、変化に対応せないかん、ということだけです。
 若い人に言っておきたいのは、次に何が起こるかを想像して仕事をすることですね。

 日本エマソンの山中信義氏は、GEとオムロンとの「戦略」についての違いを、こう語ります。

(p211より引用) GEで学んだのは、事業戦略の幹をつくり、太くすることの大切さでした。オムロンで経営戦略をつくっているときは、同僚からよく言われました。「おい山中よ、実行できない計画をつくると意味ないぞ。実行できるよう枝葉を考えてつくってこい」と。しかし、これをやると、戦略的な幹はぼけてしまう。妥協してしまうからです。GEでは、それが逆でした。お前の仕事は幹をつくり、太くすることだ。なぜこれが狙いどころなのか、なぜこれで勝てるのか、なぜこれが一番いいのか、そこだけを徹底的に掘り下げろと、と。

達人からのアドバイス

 引き続き、「外資系トップの仕事力―経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか」に登場した外資系企業トップマネジメント12名の方々のインタビューからの紹介です。
 今回は、「ビジネスマンとしてチャレンジし続ける人(必ずしも年齢的に若い人ではありません)」への言葉です。

 まずは、日本コカコーラの魚谷雅彦氏のアドバイスです。

(p20より引用) 思っていることが大事。考え続けることが大事。そうやって試行錯誤を繰り返していれば、自信を持って行動に走れるようになる。

 似たようなことは、BPジャパンの若脇英治氏も語っています。

(p240より引用) 若い人に伝えておきたいのは、とにかく勉強すること。何でも興味を持ってね。くだらない仕事と思っても、必死にそれをやると、何か動きが出てきますから。

 日本エマソンの山中信義氏が、大事にして欲しいと考えているのは、「自分の思い」です。

(p216より引用) あまり余計なことは考えずに、自分は何をやりたいのか、どういう方向に進みたいのか、納得できる仕事とは何なのか。そんな思いを持ちながら一生懸命にやればいい。そうすれば成果も出る。チャンスもきっといろいろ来る。そのチャンスが来たときに、果敢に挑む。そういう思いを持ちながら頑張ることこそが、大事なことなのだ、と。

 また、山中氏は、グローバリゼーションの流れのなかで、情報発信していくための素養として「積極的な姿勢」を求めます。
 そして、氏は、その「積極性」を阻んでいるのが「答えは一つしかない」という正解信仰だと考えています。答えは一つと思ってしまうと間違いを恐れ、発言を控えるようになってしまうのです。
 「答えは無数」と思っただけで、視界は大きく開けます。

(p219より引用) 今後は日本もますますグローバル化していく。そのなかで活躍できる人間は、答えをひとつしか求めない人間ではない。答えをマルチプルに求める人間、認める人間だと思う。

リーダーシップ

 外資系の会社では、ともかく自己主張が強くないとやっていけないような先入観があります。強烈なトップの個性が、そこでのリーダーシップの源のように思いがちです。

 「外資系トップの仕事力―経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか」に登場したマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングの柴田励司氏は、リーダーについてこう語っています。

(p37より引用) 最初は、自分が率先垂範して自分の分身になるような仲間をつくっていくわけですが、これが心地良かった。でも、この求心力型のスタイルでは規模に限界がある。そこで、違う専門性を持ったプロにいかに気持ち良く働いてもらえるか、という遠心力型へとがらっと変えてみたら、これがうまくいって、また心地良かった。・・・常にまわりに気を配り、周囲の人が喜ぶようなことをする。励まし、元気づける。それを心地良く思えるなら、良きリーダーになる素質を十分に備えている。・・・そもそも人に喜ばれるために何かをする、人のために奉仕をするのがリーダーなんです。

 強烈なリーダーシップといえば、GEのジャック・ウェルチ氏はその代表格でしょう。
 日本ゼネラル・エレクトリックの藤森義明氏は、GEで出会った人々に対してこんな印象を抱いています。

(p173より引用) まわりにいる人たちは、すごいのに謙虚ときている。学ぶ精神もあって、自分にない人のすごさというものをどんどん取り入れていく。だから、ますますすごい人になる。

 さらに「人」について。
 BNPパリバの安田雄典氏が、転職してパリバに来てよかったと感じたとき思い出した言葉です。

(p191より引用) 何の仕事をやるかではなく、だれとやるかのほうが大切だ

良質の経験

 本書に登場している方々は、留学や転職といった大きな環境の変化を経験しています。それは、すべて本人の決断によるものです。
 そして、新たな環境の中で、刺激的な「良質の経験」をされています。

 日本ゼネラル・エレクトリックの藤森義明氏が、カーネギーメロン大学に留学した際の話です。

(p162より引用) 日本で「こいつには負けるな」というすごさとは、明らかに別のすごさを感じたんです。
 たとえば、判断力。私は慎重に考えてから決めるタイプでした。いろんな条件をどう全部クリアして結論を導き出すか。でも、全部考えていると結論なんか出ないんですよ。では、向こうの連中はどうするのかというと、条件をカットしてしまうわけです。要するに、そもそも一番大事な条件や情報を選択する力があるんです。だから結論が出る。しかも速い。これは、全然違うと思いました。

 留学時の経験という点では、ルイ・ヴィトン ジャパン カンパニーの藤井清孝氏の話も紹介します。

(p140より引用) ハーバードに入学して、改めて来て良かったと思いました。何より良かったのは、すごいヤツがいて当たり前という環境に、慣れることができたことです。・・・そういうところに身を置くと、全面的に競争してもあまり意味がないということに気づくんですね。競うだけでなく、お互いに学び合う。そういう姿勢のほうが、学ぶことも多い。

 さて、最後にご紹介するのは、BPジャパンの若脇英治氏の言です。

(p241より引用) BPに入って何よりも良かったのは、自分の人生は自分の問題なんだ、ということがわかったことかもしれない。・・・尊敬されるのは、ファミリーを大事にする人間です。・・・
 西洋人は、食事の会話でよくわかりますが、いろんなことをよく知っています。人生は仕事だけじゃない。ましてやバリューはお金だったりはしない。豊かですよ、心が。そういうところにいると、自分というものを持てる。自分というものを大事にできるんです。



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