(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)
須賀敦子さんの作品は、10年以上前に「ヴェネツィアの宿」を読んだことがあるのですが、それ以来になります。
ずっと気になっていた作家さんですが、今般「精選女性随筆集」の中に見つけたので手に取ってみました。
どの作品も上品で繊細な感性が漂いながらも、しっかりと須賀さんの思索の流路が綴られていますね。
ということで、載録された作品の中から、特に、私の印象に残ったくだりを(かなりの長文になりますが)覚えとして書き留めておきます。
父との思い出をモチーフにした「オリエント・エクスプレス」と題した小文。
須賀さんは、重篤な病状にあるお父様に贈るコーヒーカップを手に入れるためにミラノ中央駅のホームに向かい、入線していたオリエント・エクスプレスの車掌長に話しかけました。
そして、急ぎ帰国した須賀さんはお父様の病室に飛び込みました。
確かに須賀さんの綴る文は、情趣にあふれ穏やかな質感をもった出色のものだと思いますが、はやり、それを活かしているのは、心に響くモチーフやエピソードを捉えるピュアな感性なのでしょう。