誰だって芸術家 (岡本 太郎)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
岡本太郎さんの著作は、かなり以前に「自分の中に毒を持て」を読んだことがありますが、こちらも予想どおり強烈なインパクトのある内容でした。
本書は、岡本さんが “芸術” をテーマに新聞や雑誌等様々な媒体で語った原稿を再録したものとのこと。半世紀前のメッセージですが、私の興味を惹いたたくさんのフレーズがありました。
それらの中からいくつかを書き留めておきます。
まずは、岡本さんの若き日、18歳でパリに渡って、世界的抽象芸術家の集まりである「アプストラクシオン・クレアシオン協会」の運動に加わったころです。
エネルギッシュな言葉ですね。すでに岡本さんは、その協会の中でも独自の立場を築いていました。
こういった岡本さんの “個性” は、“伝統” を否定するのかといえば、必ずしもそうではないようです。
“伝統” に対する意味付けが異なるのです。自分たちで自分たちの “新たな伝統を創っていく” という立場ですね。
ちなみに、ちょっと前に「磯崎新の『都庁』」という本を読んだのですが、その中で、岡本太郎さんが「大阪万国博覧会(1970年開催)」の“テーマ・プロデューサー”として丹下健三さんや磯崎新さんと関わったくだりが紹介されていました。
岡本さんの「太陽の塔」が丹下さんが設計した「お祭り広場の大屋根」をぶち抜いたエピソードは、まさに型破りの岡本さんの真骨頂でしたね。
さて、最後に本書で最も印象に残ったくだりを書き留めておきます。
岡本さんが若き日にパリに来ての苦悩の吐露です。
あの豪快に見える岡本さんがこれほどの重圧に苦しんでいたというのは驚きであったと同時に、その抱いていた気概の純粋さに感じ入りました。
岡本太郎さんといえば、誰もが “芸術は爆発だ!” に象徴される豪放磊落なイメージを抱いているのではと思いますが、ここに紹介されている岡本さんの小文の印象は違っていました。
お話の内容はとても分かりやすく、その語り口はとても優しく読みやすいものでした。自分の純粋な感性を素直に表現しているせいもありますが、決して独りよがりにならず、しっかりと読み手の立場を意識して記されているんですね。
細やかな心を持ったとても魅力的な人物です。