知的生活の方法 (渡部 昇一)
渡部昇一氏の著作は、以前、「日本史から見た日本人 昭和編」という本を読んで、納得できるところのもあれば、ちょっと?というところもあったのですが、今回は「歴史観」とは別のテーマの本です。
初版は30年ほど前(注:今回の再投稿時からは40年以上前)のものなので、時の移ろいを感じつつも、興味深い考え方がそこここにありました。
タイトルにある「知的生活」という言葉自体耳慣れないのですが、それ以上に私にとって新しかったのは、「知的正直」という単語です。著者によると、英語には「Intellectual honesty」という言葉があり、「知的正直」とは、簡単に言うと「わからないのにわかったふりをしない」ということだそうです。別の言い方をすれば「己れに対して忠実なれ」ということです。
著者にとって「知的生活」を構成するものの重要なパーツは「読書」です。
(p47より引用) 読書の、つまり知的生活の真の喜びは、自己に忠実であって、不全感をごまかさないことを通じてのみ与えられるもののようである。
本書のかなりの部分は、著者の薦める「読書法」です。
その中の一つ、「繰り返して読む」ことについての著者のコメントです。
(p52より引用) 繰りかえして読むということの意味はどういうことなのだろうか。それは筋を知っているのにさらに繰りかえして読むということであるから、注意が内容の細かい所、おもしろい叙述の仕方にだんだん及んでゆくということになるであろう。これはおそらく読書の質を高めるための必須の条件と言ってもよいと思う。
その他、渡部流の「知的生活」をおくるための情報整理の方法・空間の作り方・時間の使い方・・・、果てにはワインの飲み方やホットミルクの作り方まで披露しています。
amazonの書評には「本書には、平均的日本人に実現可能な、さまざまなヒントとアイデアが、著書自身の体験を通して、ふんだんに示されている。」と書かれています。
確かに、なるほどと思う刺激的なアイデアも豊富に開陳されています。
が、正直なところ、著者のように、「○○全集」に100万円以上費やしたり、書棚をおいても傾かない構造の家を建てたり・・・というのは、なかなか普通の人にはできないと思いますね。