腹八分の資本主義 日本の未来はここにある! (篠原 匡)
中央主導の地域振興策や福祉施策の無駄が指弾されている現在、中央に頼らない住民目線での改革で成功を収めている地方自治体がいくつか誕生しています。
また、厳しい経営環境の中においても、地域に根ざした特徴的な経営を続け業績を伸ばしている企業もあります。
本書は、それら画期的な取り組みを実施している現場を訪れ、リーダーの想いや関係者の苦労、成功の要因等を紹介したものです。
充実した子育て支援策を中心に出生率を向上させた長野県下條村。伊藤喜平村長は、この3点セットに頼らない地域独自の取り組みを推進しました。
その過程では、補助金を活用した施策の失敗も経験したとのこと。その失敗を教訓とし、地元密着の施策で頑張ったのが成功の要因でした。
本書が取り上げている実例は、日本に止まりません。
社会福祉先進国スウェーデンの国営企業サムハルの紹介の一節です。この企業は、従業員の9割が障がい者。障がい者を労働者として自立させるためにつくられた障がい者のための企業です。
ポイントは、「国民も理解している」という点です。
サムハルには醒めた目的もあります。高福祉負担に応える財務基盤強化のためには税収の確保は避けられません。一人でも自立した労働者を増やすことは、納税者を増やすことでもあるのです。しかし、そのための施策を実行していく社会環境が、日本とは圧倒的に異なるのです。
とはいえ、日本にも「人」や「社会」を大事にしている企業があります。
伊那食品工業。
利益拡大を最大目標にしている企業のなか、会社の経営理念として「社員の幸せを通して社会に貢献すること」を掲げる塚越寛会長の言葉です。
そうですね、「お客様」も「人」、「社員」も、やはり「人」です。