マネジメントの使命
ドラッカー氏の「マネジメント」の復習です。
まず、本書の冒頭でドラッカー氏は「企業とは何か」を問い、「企業≠営利組織」と述べています。
顧客のみが市場を創造します。そこでドラッカー氏はこう続けます。
マーケティングの目標を考えるにあたって、ドラッカー氏は先立つべき二つの意思決定があると言います。「集中の目標」と「市場地位の目標」です。
そのうち「市場地位の目標」に関するドラッカーの指摘は重要です。
ドラッカー氏は、独占による市場の停滞よりも、適度な競争状態による市場の拡大・活性化を重視しているのです。
このあたりの考え方は、本書の最終章「マネジメントの戦略」でとりあげられている「必要な成長とは何か」との命題の議論でも示されています。
このドラッカー氏のアドバイスに従うのは非常に難しいですね。事業を推進する立場に就くと、「黒字であれば(赤字でさえなければ)、生産性が落ち始めていてもその施策はgo」という判断をしてしまいがちです。
さて、最後に、ドラッカー氏の最重要テーゼのひとつ「イノベーション」に関する主張を記しておきます。
「変化」に対するポジティヴ・シンキングです。
マネジャー
ドラッカー氏によるマネジャーの定義は「組織の成果に責任を持つ者」です。
そして、ドラッカー氏は「マネジャーの役割」を以下のように説明しています。
さらに続けて、その役割を踏まえたマネジャーが取り組むべき具体的な仕事も明示しています。
そしてこれらの役割を果たすべきマネジャーに必要な資質は「真摯さ」だと断言しています。
このあたりの指摘は、いかにもドラッカー氏らしい語り口ですね。
さてもうひとつ、「組織の精神」の章でのドラッカー氏の指摘も重要です。まず、組織の目的としてこう切り出します。
凡人からなる組織は「事なかれ主義の誘惑」にさらされます。この点についてのドラッカー氏のアドバイスです。
この点はドラッカー氏に限らず、多くの先達によって指摘されているところです。
が、これほど言われ続けているということは、現実はなかなかこのとおりになっていないという証左でしょう。私も折にふれて心しなくてはなりません。
マネジメントの方法
マネジメントは通常日本語では「管理」と訳されますが、その「管理」についてドラッカー氏が語った章から、私が関心をもったフレーズを書き記しておきます。
まずは、「管理手段」の特性についてです。
この第一の特性を踏まえてドラッカー氏はこう指摘しています。
「目的(対象)」の明確化が最も重要で、「いかに(手段)」はそれに従属するとの考えです。
さらに、あと二つの特性はこれらです。
最近、「見える化」「可視化」の重要性がいわれています。
もちろんその重要性を否定するものではありませんが、そもそも「何を」対象とするのかが重要である、定量化(可視化)外のところにも管理が必要な事象があるとのドラッカー氏の指摘は、なるほどと思わせるところであり、改めて心しなくてはならないと感じました。
もうひとつ、「経営科学」をテーマにしたドラッカー氏の議論です。
ドラッカー氏は「経営科学」はマネジャーにとって有効なツールであるにも関わらず、その活用方法に問題があると考えています。
この指摘の根本にある「リスクに対する考え方」、すなわち、リスクは避けるものではなく取るものだという姿勢は、まさにドラッカー氏のマネジメント思想の根本に流れているものですね。