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無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか? (江上 隆夫)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。
無印良品、富士フイルム、スターバックス等の実例を紹介しながら、商品企画・開発を成功に導く「コンセプト」の重要性と、優れたコンセプトの「作り方」やその「使い方」を丁寧に説明しています。
まず著者が着目したブランドは「無印良品」。
無印良品は1980年西友のプライベートブランドとして登場したのですが、当時大学生だった私の記憶にも残っているぐらいインパクトがありましたね。当初は「安さ」が売りでしたが、最近はそうでもありません。
(p6より引用) 何でもかんでもあるブランドで、価格も思っているほど安くはない。でも、たくさんの人に受け入れられて成長し、業績も好調。
とても不思議なブランドですが、著者は、その成功の要因を「コンセプト」にあると主張しています。
ちなみに、本書でテーマにしているコンセプトですが、著者の定義はこうです。
(p26より引用) 「目的を達成するための原理・原則を短く明確に表現した言葉」
したがって、コンセプトベースで物事を進めるためには、取り組む前に「原理・原則を明確にしておく」必要があります。
しかしながら、この段取りは日本人は苦手です。最初にビジョンや目標を定めるよりも、目の前の事象を対象にそれに「改善」を加えていくという、まずは「対象」ありきの取り組み方が身についているからです。
この点について「無印良品」のコンセプトは秀逸です。
日常品から家まで幅広いジャンルをカバーした多彩な商品のひとつひとつが「無印良品のくらし」という唯一の共通点をもってラインナップされています。この「無印良品のくらし」とは、「無理をしない感じの良いくらし」です。
「『これがいい』ではなく『これでいい』」。この「これでいい」の含意が深いのです。
(p58より引用) 「が」には微かなエゴイズムや不協和が含まれていますが「で」には抑制や譲歩を含んだ理性が働いています。一方で「で」の中には、あきらめや小さな不満足が含まれるかもしれません。従って「で」のレベルを上げるということは、このあきらめや小さな不満を払拭していくことなのです。そういう「で」の次元を創造し、明晰で自信に満ちた「これでいい」を実現すること。それが無印良品のヴィジョンです。
本書で著者が伝えたいことは「優れたコンセプトの創造とその活用」です。そのための考察を進めている著者は、優れたコンセプトには共通の「働き」と「性質」があることに気づきました。
(p71より引用)
働き
1.力を束ねる
2.在り方を決める
3.行動を指示する
4.価値を最大化する
性質
1.本質とつながっている
2.寿命がある
3.決断に左右される
そして、これらの項目が、「コンセプト」として役に立つかの“チェックリスト”にもなるのです。
ところで、コンセプトは何の役に立つのでしょう。コンセプトの「目的」は何でしょう。
著者はこの点についてこう語っています。
(p86より引用) コンセプトの最終的な使命は、企業や商品が持つポテンシャルをすべて引き出し、世の中に対して、そのブランドの「価値を最大化する」ことなのです。
価値を最大化するとは、平たく言えば「かかわる人に自分が可能な限りの幸福(利益)をもたらす」ということ。これがコンセプトの、もっとも大事な働きなのです。
こういう重要な役割を担う「コンセプト」ですが、それを作り上げる方法についても著者は第五章で9つのステップを辿る形で具体的に示しています。
コンセプトはクリエイターの特異な才能・ヒラメキによって作られていると考えられがちですが、著者はコンセプトづくりはロジカルに考えることが王道だと主張しているのです。
(p202より引用) なぜなら、クリエイティブなアイデアや言葉は、論理を積み上げた先にしか生れないからです。
ロジカルに考え抜いたうえで、最後にジャンプする、そして、それをまたロジカルに検証するという営みです。
さて、本書の最終章のテーマは「コンセプトの使い方」です。
コンセプトを事業活動(プロジェクト)の基本軸に据え、その指し示すところを共有し、その方向でメンバ全員のベクトルをあわせ邁進(実行)する。
ともかく、コンセプトは「行動」に結びつかなくては無意味なのです。