無印良品の「あれ」は決して安くないのに なぜ飛ぶように売れるのか? (江上 隆夫)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。
無印良品、富士フイルム、スターバックス等の実例を紹介しながら、商品企画・開発を成功に導く「コンセプト」の重要性と、優れたコンセプトの「作り方」やその「使い方」を丁寧に説明しています。
まず著者が着目したブランドは「無印良品」。
無印良品は1980年西友のプライベートブランドとして登場したのですが、当時大学生だった私の記憶にも残っているぐらいインパクトがありましたね。当初は「安さ」が売りでしたが、最近はそうでもありません。
とても不思議なブランドですが、著者は、その成功の要因を「コンセプト」にあると主張しています。
ちなみに、本書でテーマにしているコンセプトですが、著者の定義はこうです。
したがって、コンセプトベースで物事を進めるためには、取り組む前に「原理・原則を明確にしておく」必要があります。
しかしながら、この段取りは日本人は苦手です。最初にビジョンや目標を定めるよりも、目の前の事象を対象にそれに「改善」を加えていくという、まずは「対象」ありきの取り組み方が身についているからです。
この点について「無印良品」のコンセプトは秀逸です。
日常品から家まで幅広いジャンルをカバーした多彩な商品のひとつひとつが「無印良品のくらし」という唯一の共通点をもってラインナップされています。この「無印良品のくらし」とは、「無理をしない感じの良いくらし」です。
「『これがいい』ではなく『これでいい』」。この「これでいい」の含意が深いのです。
本書で著者が伝えたいことは「優れたコンセプトの創造とその活用」です。そのための考察を進めている著者は、優れたコンセプトには共通の「働き」と「性質」があることに気づきました。
そして、これらの項目が、「コンセプト」として役に立つかの“チェックリスト”にもなるのです。
ところで、コンセプトは何の役に立つのでしょう。コンセプトの「目的」は何でしょう。
著者はこの点についてこう語っています。
こういう重要な役割を担う「コンセプト」ですが、それを作り上げる方法についても著者は第五章で9つのステップを辿る形で具体的に示しています。
コンセプトはクリエイターの特異な才能・ヒラメキによって作られていると考えられがちですが、著者はコンセプトづくりはロジカルに考えることが王道だと主張しているのです。
ロジカルに考え抜いたうえで、最後にジャンプする、そして、それをまたロジカルに検証するという営みです。
さて、本書の最終章のテーマは「コンセプトの使い方」です。
ともかく、コンセプトは「行動」に結びつかなくては無意味なのです。
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