GMの言い分 (ウィリアム・J・ホルスタイン)
現在(注:2009年の本稿投稿時点)、経営再建中のGM(General Motors)。
朽ちた巨木のイメージがあるGMですが、朽ち果てるまで安穏としていたわけではありません。
本書は、経営陣・社員等へのインタビューをもとに、そのGMの今に至る道程を明らかにしていきます。彼らの口からは、従来のやり方への反省とともに、GM自らがその対策として数々の企業構造の変革にチャレンジしていたことが紹介されます。
GMは、コスト面では、年金・医療費負担を中心とした「社員の福利厚生費の既得権益化」が、利益改善の大きな障害になっていました。
また、収益面では、消費者のニーズを踏まえた売れる車を世に出すという「基本的なマーケットインの思考」が決定的に欠落していたのでした。
GMの変革に向けたアクションは多岐に及んでいました。
もちろんその中には「生産性の向上」も含まれています。お決まりの手法ですが、そのお手本は「トヨタ」でした。
このGMSは、新規建設された工場から導入されましたが、重要な課題は、このGMSをGM流に慣れ親しんでいる既存工場にも適用できるかということでした。そして、20年余りの期間をかけて、GMはすべての工場でほぼ満足すべきレベルのGMS導入を果たしたのです。
このようなGMのトヨタに学ぶ姿勢は、新車開発のフェーズにおける「現場重視」のアクションにもつながりました。
新車の開発にあたって初期段階から生産現場の声を活かそうという取り組みをすでに実施し、具体的な成果をあげているということです。
著者は、本書で、GMも改革し続けていたことを多面的に指摘しています。
しかしながら、GMは経営危機に陥り、今まさに再建途上にあります。
ビッグスリーを救済するか否かにあたっては、アメリカにおける自動車産業の「現代的位置づけ」がひとつの議論になりました。
この点についての著者の主張は明確です。
GMの経営破綻は、もちろん、サブプライムローン問題に端を発した世界的金融危機がもたらした大不況がその主要な原因であったことは否定できません。
もし、この世界的金融危機がなかったとしたら、GMは繁栄し続けたか?
この仮定は現実的には無意味ですが、非常に興味深い仮定ではあります。