(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
いつも聞いているpodcastの番組に著者の佐藤剛さんが登場したとき話題になった本なので、気になって手に取ってみました。
坂本九さんの代表曲「上を向いて歩こう」をテーマにしたノンフィクションです。
確かにとても興味深いエピソードが盛りだくさんの内容ですが、その中から私の印象に残ったものをいくつか書き留めておきます。
まずは、「上を向いて歩こう」を大ヒットさせた坂本九さんについて。
著者は、この全世界的ヒットにおける坂本九さんの功績が正当な評価を得ていないと考えていました。
そして、海外の高評価に対する日本での低評価の要因を、怒りにも似た気持ちでこう指摘しています。
もうひとつ、中村八大さんの「作曲家としての自由で伸びやかな思考」を紹介しているくだり。
さらに、作詞家永六輔さんとの関わりのシーン。
“独特の世界観” を持つ作曲家・作詞家と歌手としては “未知の可能性” をもっていた坂本九さんとの出会いは、日本歌謡史上における僥倖のひとつでしょう。
その後「上を向いて歩こう」は、奇跡ともいうべき人のつながりにより、フランス、イギリスでのレコード発売を経てアメリカでの全米ヒットチャートで1位、空前絶後の大ヒット達成という道を辿ることとなりました。
その一部始終を描き出したこの著作、戦後の日本音楽界黎明期のドキュメンタリーとしてもとても意義深いものだと思います。