
御社のチャラ男 (絲山 秋子)
(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)
ちょっと「タイトル」が気になったので、普段手に取らないテイストの本を読んでみました。
中心人物は「三芳部長」。
彼に関わる人々が、彼について、他の会社の人々について、あるいは自分自身について語るのですが、それは人物評でもあり、会社を舞台にした人生話であったりします。
一連のストーリーが一定方向に流れていくのではなく、それぞれの登場人物による語りが15編並んでいて、ところどころで描かれたシーンが伏線的に交錯するという変わったつくりの物語でした。
さて、読み終わっての私の感想です。
小説なので「ネタばれ」的な引用は控えておきますが、正直なところ私にはあまり合いませんでした。
私にとって致命的なのは「ストーリーの楽しさ」が感じられないという点ですね。
それぞれの登場人物は多彩なのですが、構成のせいもあって二次元的に出てきては消えてしまいます。各々のエピソードは横方向に拡散するだけです。「三芳部長」が物語の “軸” かといえば、それほどのインパクトのあるキャラクタ設定でもないので、どうにもまとまりません。
最後は大ナタを振るったようなプロットが準備されていましたが、それも結局のところ唐突でしかありませんでした。
とてもチャレンジングな作品ではあるので、ちょっと残念ですが、今一つ中途半端・・・という読後感です。