スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実 (ルーク・ハーディング)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。
全世界のメールや通話情報など大量の情報がNSA(米国国家安全保障局)により監視・収集されていたという驚きの事実。
その始まりは、やはりあの事件です。
この実態が、エドワード・スノーデンの登場により白日の下にさらされたのです。
ただ、スノーデン以前にも部分的には報道されたことがあります。2005年には「ニューヨーク・タイムズ」に「ブッシュ政権、裁判所の許可なく電話を盗聴」という記事が出ました。
当時は「テロ対策」という理由が、以前の常識では実行できなかったようなアクションを実施にうつす上で、”水戸黄門の印籠”のような効果をもっていました。
この口実のもと、9.11以降、ありとあらゆる人々を対象とした信じがたいような情報収集が、google、facebook、microsoftといった企業の協力の下でなされていました。
そういった状況に対し超弩級の爆弾を落としたスノーデンは、しかし、彼なりの理想をもった愛国者でした。
方法については、もちろん様々な立場から様々な評価がなされています。また動機の面からも「理想が高潔であれば、何でも許される」というわけではありません。
しかしながら、この事実が、全く人々の目から隠蔽されていてよいものではないでしょう。如何にスノーデンの明らかにした実態が極めて高度な政治的事項であったとしてもです。
なかでも、ドイツのメルケル首相の携帯電話の情報入手は、ヨーロッパ諸国にとっては大変ショッキングは事件でした。
そして、スノーデン後の世界は動き始めました。
さて、本書を読んで、最も印象に残ったくだりです。
「デア・シュピーゲル」とのインタビューで「なぜ米国スパイはメルケル首相を盗聴したのか」と問われた際、ジョン・マケイン上院議員はこう答えました。
この台詞は、ある種のスパイ共通のメンタリティを表わしている点でも興味深いものですし、また、多くの人々が極めて重要な保護されるべき権利だと考えている「プライバシー」を、マケイン氏自身どう捉えているかを推し量る意味でもなかなか深い?(あるいは、軽い?)言葉だと思います。