祖国とは国語 (藤原 正彦)
会社の方からお借りして読んでみました。
「国家の品格」がベストセラーとなった藤原正彦氏のエッセイ集です。
出版は「国家の品格」より前ですが、当然ながら著者の主張は一貫しています。
著者の主張の柱は、論理に勝る「教養」「情緒」の大切さです。
著者のいう情緒は、他人を慮る気持ちや「もののあはれ」を感じる心情、美しいものを愛でそれに感動する心といった幅広い教養に裏打ちされた情緒です。
こういう「情緒」は、「論理」に先立つものとしてあります。「情緒」が体現する「普遍的価値」と捉えているものは、「日本人が抱く世界観」といってもいいでしょう。
国際社会において認められるものは、この「世界観(=大局観)」の是非になります。「論理性」はそれ自体が重要なのではなく、論理的議論が拠って立つ「世界観」が本質的な意味を持つということです。
さて、本書ですが、大きく3つのパーツに分かれます。
後の「国家の品格」に連なる「国語教育絶対論」、藤原家の人々の風景を描いた軽妙洒脱なエッセイ集である「いじわるにも程がある」、そして、著者の出生地満州を家族で訪ねた際の思い出を綴った「満州再訪記」です。
それらのうち、「満州再訪記」から、私の印象に残った一節をご紹介します。
昭和20年8月9日、長春を引き上げるために着の身着のままでたどり着いた新京駅を、数十年の年月を経て改めて訪れたときのくだりです。
駅舎の二階に続く階段を前にして、著者はこう記しています。
著者の母であり、作家新田次郎の妻である藤原ていさんの「流れる星は生きている」を読んでみたくなりました。
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