22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (成田 悠輔)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
著者の成田悠輔さんは、最近大きな話題になりメディアでの露出も目立つ研究者&実業家です。
私自身、いままでは時流に乗った著作にはあまり関心がなかったのですが、やはり “食わず嫌い” は良くないと思い手に取りました。
読んでみると、いろいろな意味?で興味深いコメントが満載で、その中から2・3、覚えとして書き留めて置くことにします。
まずは、「第一章 故障」の章から。
成田さんは「21世紀に入ってからの経済を見ると、民主主義的な国ほど、経済成長が低迷しつづけている」と指摘し、その原因についてこう語っています。
“劣化” というのが、重要な傾向ですね。政治家、官僚、マスコミ、そして、私たち国民の“劣化” です。
その国民の劣化をもたらしている要因のひとつとして、成田さんは「情報流通やコミュニケーションの過激化・極端化」を挙げています。そして、それを防ぐ対策はこうです。
なかなか大胆な提案ですが、確かにTwitter空間でのやり取り、特に匿名でのものは、実名ではとても言えないような悪意に満ちた過激なものが目につくのも事実です。
それが少なからず「知的劣化」に結びついている点は首肯できます。“反知性主義” が頭を擡げているともいえるでしょう。
とはいえ、どんなイノベーションも、メリットもあればデメリットもあります。プラットフォーム側だけで100%(正しく?)コントロールするのは不可能ですし、それは単一の価値観の押しつけになるリスクがあります。
結局は、参加者・利用者のリテラシー・倫理観との併せ技での対応ということになるのでしょうが、悩ましい問題です。“真っ黒なもの” だけでも排除できればいいのですが・・・。
そういった現状にあって、成田さんは、「民主主義」の再生に向け今の社会水準を基点に“0ベース”で民主主義を構成し直しました。
これは、とても面白い考え方です。民主主義といえば、多数決とか選挙とかが不動の前提のように考えていた “思い込み” が見事に覆されましたね。
成田さんの提案する “民主主義の再構成案” が「無意識データ民主主義」です。
とのことですが、この新たな民主主義的方法の成否のポイントのひとつは、「いかにして、人々の意思を反映したイシュー・論点を提示できるか」という点にあると思います。
間接代議制民主主義は否定しているのですから「代議士(立法府・政治家)」がその提示役になれないとすると、無意識データの集積は「行政府(官僚?)」の役目になるのでしょうか。それとも、サイバー空間上のAI???。
本書が提示した「民主主義再生議論」は、近未来的なソリューションの提示として、とても独創的です。
もちろん、そのための社会システムへの実装までの道程は一筋縄ではいかないでしょう。
まさに、成田さん自身もこう指摘しています。
とはいえ、今の “非知性主義的社会状況” を鑑みるに思考実験からチャレンジする意義は十分ありますね。
こういったアイデアを “自分の頭で考えてみる” だけでも大きな進展です。