新・オリエント急行殺人事件 (森村 誠一)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
また図書館で予約している本の受取タイミングがうまく合わなかったので、昔の本を納戸の本棚から引っ張り出してきました。
選んだのは、今から30年以上前の森村誠一さんのミステリー小説です。当時、森村さんの作品は結構読んでいました。
さて、久しぶりに読んだ森村作品の感想ですが、正直なところ、かなり残念な印象でしたね。
エンターテインメント性を意識し過ぎたせいか、表現やプロットに低俗な阿り感が結構強く感じられます。
また、ミステリー作品としてみても、今ひとつでしたね。犯行の動機において納得感を抱けるような深淵な背景があるわけでもなく、犯行の手口においても奇抜なトリックや巧妙なアリバイが準備されているわけでもありません。舞台設定や登場人物のプロットも陳腐です。
物語の構成も、前半は冗長でいながら、後半の最後の最後でいきなり唐突感のある新たな展開からあっけないラスト。最後の方で明かされる動機になったエピソードも、松本清張さんの「十万分の一の偶然」が思い起こされるような既視感がありました。
数々の森村さんの作品を見渡しても、珍しいほどの「???」の出来ばえだと思います。