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コロナ禍、貧困の記録 (雨宮 処凛)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着書の棚で目についた本です。

 雨宮処凛さんの著作は初めてです。
 本書は、長年にわたり「貧困問題」に取り組んできた雨宮さんが、今般のコロナ禍がもたらした貧困に苦しむ人々の生活への強烈なインパクトを、時の政権の取り組みや現行の福祉制度を押さえつつ書き記したレポートです。

 本書では、数々の貧困の構造と課題が示されています。その多くは、2008年のリーマンショックを端緒とし、その時の教訓が何ら活かされることなく、今般のコロナ禍で問題が一気に噴出したものでした。

 たとえば、「フリーランス」の場合。

(p46より引用) リーマンショックで大量の人が派遣切りされ、寮を追い出されて住む場所も失い一気にホームレス化してしまったことについて、私たち反貧困運動をする側は、ずーっと「働く人を保護する方向での法改正」を求めてさまざまな取り組みをしてきた。しかし、あれから12年。それは遅々として進まず、非正規で働く人は08年の1737万人から19年には2165万人へと、428万人も増えた。それだけではない。「働き方改革」の名の下に、副業・兼業が推進されてきただけでなく、フリーランスで働く人も増えたし、政府もそれを推進する方向で来た。・・・
 が、フリーランスが推進されてきたわりには、そのような形態で働く人たちの「保証」に関する制度はまったく作られてこなかった。それが今回のコロナ不況で、最悪の形で露呈してしまったのである。

 セーフティネットとしての「公助」は機能せず、“民間ベースのボランティア(助け合い)活動” に頼りながら、厳しい状況は一向に改善されないまま迎えることになった2020年の12月。

(p202より引用) 今年、突然猛威を振るったコロナ禍は、リーマンショックの比ではない打撃をこの国にもたらした。格差と貧困がじわじわと深刻化する中、それでもギリギリ生活していた人たちにとって、文字通り「トドメの一撃」となってしまった。
 ネットカフェで暮らしていた人、ダブルワークをすることでなんとかアパート生活を維持できていた人、自分は貧困とは無縁だと思っていた人、20年以上、寮付き派遣で全国各地の工場を転々としてきた人―。
 そんな人たちからのSOSが、この春からひっきりなしに届き続けている。家賃を滞納してもうすぐ追い出されるというアパートの一室から、ネットカフェから、深夜のファストフードから、コンビニから、車上生活をしている車から、悲鳴のような「助けて」の声が上がっている。
 彼ら彼女らと出会うたび、「よく生きててくれた」と思う。

 本書で雨宮さんが目指したこと。

(p48より引用) この機会に、何がどうなっても生きていけるノウハウを、一人でも多くの人に習得してほしい。あなたが制度や支援団体に詳しくなれば、自分のみならず、周りの人を助けられる。そしてその知識を生かして、ゆくゆくはホットラインのボランティアなんかに参加してくれると、もっともっと多くの人を助けられる。
 あとになって「コロナも悪いことばかりじゃなかった」と言い合えるような、そんな機会にできたらと、今、心から思っている。
 とにかく、生存ノウハウを習得して、生き延びていこう。お金のことだったら、絶対になんとかなる。

 もちろん、立法や制度、それらを実際に運用していく体制等々、是正・改善すべき課題はそれこそ山のように顕在化していますが、それらが政治の責任で解消されない以上、まずは、“今を何とかしのぐ”、その切羽詰まった人たちに手を差し伸べること、これが不本意ながらも、最優先に取り組むべきアクションだということです。

 そして、今2021年も年末が近づいています。
 本来なら一年前よりも格段に状況が改善されているべきではありますが・・・、ともかく一年前より少しでも人々の苦しみが減っていることを心から祈りたいと思います。



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