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Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (津田 大介)

(注:このエントリーは2010年のBlogを再投稿したものです。10年以上の時を経て、ここでの津田さんの指摘を振り返ってみると、どう評価されるでしょうか?)

 登録はしているものの、なかなか活用方法が確立できないでいるTwitterです。
 本書は遅まきながら手に取った代表的なTwitter入門書です。

 基本的なTwitterの機能や使い方等々はともかく、私の興味を惹いたのは「ツイッターとジャーナリズム」の章での解説でした。著者なりに、過去からの議論を踏まえ「ジャーナリズム」の特質を整理し、そのテンプレートにTwitterを当てはめて議論を進めていきます。

(p80より引用) 現在のメディアやジャーナリズムに強く求められるようになっているのは、問題を「伝える」だけでなく、複雑な社会問題に潜む様々な論点・争点をオープンにして解きほぐすことで、問題の解決策を提示し、その解決策への評価も含めて読者に提示していくことだ。これは「アジェンダセッティング(議題設定)」とも言われ、メディアやジャーナリズムがアジェンダセッティングを意図した報道を行うことで、自動的に情報の受け手がその情報を議論する際の文脈や基礎知識、枠組みを習得していくという現象が起きる。

 Twitterはこの機能を積極的・能動的に果たせるのか、Twitterユーザがこの機能を意図的に不正に使うのをコントロールできるのか、この点は、今後、Twitterがソーシャルメディアとしての立ち位置を獲得できるのかの重要な試金石のひとつとなります。

(p81より引用) 現代のメディアやジャーナリズムには、彼らが本来的に持っていた伝達機能監視機能に加えて、社会の争点を公共化する「構築機能(アジェンダセッティング)」が求められているのだ。

 さて、メディアとしての原始的な機能である「伝達機能」。この点についてのTwitterの位置づけはどうなっていくでしょうか。
 著者はこう述べています。

(p87より引用) 現在メディアが担っている「伝達機能」は、これから間違いなく多くの部分をツイッターに取って代わられる。しかし、これは既存メディアの役割や必要性が大幅に変わるという話ではない。投稿された真偽の不確かな1次情報-本書ではこれを「0.5次情報」と表現したい-に対して、どのような検証を行い、どう信頼性を担保して1次情報にするか。その過程で生じる「0.5→1」のプロセスが重要になってくるということだ。

 従前は、既存メディアはニュースの発生源を抑えて情報を囲い込んでいましたが、ソーシャル・メディアの発展でニュースは発生現場からリアルタイムで発信されるようになっていくというのです。確かに、最近のUstream等の活況をみてもこの流れは不可避でしょう。
 そうなると、今後のメディアのKSFはどうなるか。

(p91より引用) 今メディアやジャーナリズムが試みるべきは、インターネットを中心とした情報環境の変化に抗うのではなく、公共財化する情報にいかにして信頼性を与え、その信頼性をいかに「金」に変えるかということの試行錯誤である。

 まさに重要なポイントは「信頼性」です。自らに役立つもの、信頼できるものに限って、利用者はコスト負担を甘受するからです。

 ジャーナリズムの一形態のほかに、まさに現在、Twitterの利用方法があれこれ試行錯誤されているジャンルとして「企業広報・プロモーション」があります。
 この点は、私も大変関心を抱いているものですが、著者のコメントはこうです。

(p154より引用) 企業のツイッター活用は今後も広まっていくだろう。しかし、根本的な話として「とりあえず成功事例を参考にツイッターアカウントを導入してみればうまく運ぶだろう」というのは幻想だ。・・・そもそも閑古鳥が鳴いている「企業ブログ」を放置しているような企業がツイッターを試してみたところで結局は同じなのだ。

 とはいえ、筆者は2つの点で、企業がツイッターのアカウント開設のメリットを認めています。

(p155より引用) 1つは予防法務的な意味でだ。アカウントがあれば、自社名や主力商品・サービスなどをまったく関係のないユーザーに取得された上に、印象が悪くなる行為をされることを防ぎやすい。・・・もう1つは、運営コストの小ささだ。・・・
 企業ツイッターで大した成功は収められなくても「やらないよりかはあった方がマシ」という考え方もできる。

 企業での活用は、私のところでもトライアル的にあれこれと試みています。ともかく、何かやってみなくては始まりませんから。



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