有機化学が好きになる (米山 正・安藤 宏)
いつも行っている図書館の新着図書の棚で目に付いたので手にとってみました。
「新装版」とありますが、もとは1981年に初版が発行されたものとのこと。
私は高校(もう45年以上前のことですが)で文科系コースを選んだので、「有機化学」についてはほんのさわりぐらいしか習っていません。が、当時から理科系の科目は大好きで、その手の話題にはとても興味をもっていました。天体関連のテーマを中心に、中学時代からブルーバックスも結構読んでいましたね。本書は、まさに「タイトル」に嵌ったという感じです。
さて、本書ですが、有機化学の基礎知識を順を追って分かりやすく説明しています。C(炭素)とH(水素)だけでできる化合物(CnH2n+2)の数が多い理由、異性体の立体構造等、ごく基本的な事項については改めてきちんと理解できました。
そういう理論的な解説のほかに現実的な場を想定した補足説明も加えられています。
たとえば、アセチレンから、硫化水銀(Ⅱ)を触媒にしてさらに水を付加し、アセトアルデヒドや酢酸を作る工程についてです。
このことが現実に悲惨な結果として表れたのが「水俣病」でした。
本書前半の有機化学の基礎的説明に続いて、後半では、主に有機化学の研究の実際を分かりやすく解説しています。
このあたりから少々ややこしくなっていくのですが、実験の現実が、地道な試行錯誤の連続であることはよく伝わってきます。
新たな事柄を発見する、すなわち創造的な活動には、それ相応の時間と行動が必要だということを改めて感じます。そして、その地道な粘り強い努力に心からの敬意を表します。
ネット上の検索行動による受動的な発見は、所詮二次情報、他力依存でしかありません。
「創造」の源泉は、確固たる強い意志と継続的な実践力、すなわち、ありきたりの言葉ですが研究者としての「情熱」であり「信念」なのでしょう。