虫とゴリラ (養老 孟司・山極 寿一)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
養老孟司さん、山極寿一さんという気になるお二人の対談を書き起こした本とのことで手に取ってみました。
期待どおり興味深い発想や指摘が満載でした。それらを順不同で書き留めておきます。
まずは、山極さんが語る「人間の歴史が始まる契機」について。
そして、山極さんの説明はこう続きます。
なるほど、「食物→信用→社会性」という連関ですね。他者を “信用” することが人間ならではの “社会性”を創造する源 だった、これはなかなか気づかない視点です。
続いては、養老さんが指摘する “今の世界の「本人」” について。
養老さんが銀行に行ったとき「本人確認書類」の提示を求められました。対応している銀行員は、目の前にいる人が “養老さん本人” であることは知っているにもかかわらずです。
さて、本書を読み通しての感想です。
こういった対話本は、ライブ感があって読んでいてとても面白いのですが、反面、取っ付きにくさを感じることがありますね。対話している当人同士にとっての “既知の了解事項” を前提として話が進んでいくと、第三者たる私(読者)は理解が追い付かなくなるのです。
本書でも少なからずそういった場面がありました。ただ、これは致し方ないですね。いちいち部外者用に説明を加えていては「対話」の良さであるライブ感が消えてしまいます。
対策は「読者」側にあります。対話している方々の知識や考え方を、前もって(ある程度)理解しておくことです。その方々の思考水準に少しでも近づいておくことです。
これは、もちろん大変ですが、そうしようとするプロセス自体、とても楽しみなことでもありますね。