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仮説力 (竹内 薫)
竹内薫氏の本が続きますが偶々です。
著者は、本書で、普段の社会生活における「科学と仮説」の重要性を伝えるとともに、読みやすい体裁で「理系的発想」による頭の切り替えのヒントを数多く紹介しています。
さて、典型的な科学的発想法としては「原因と結果」、「因果関係」が挙げられますが、著者はこのステレオタイプ的発想に拘泥することを諫めています。
(p38より引用) 原因があって、結果があるというのは、ひとつの解釈にすぎない。場合によっては、その逆のこともあります。結果と思われていたほうが、実は、原因のほうに影響を与えてグルグル回っているような状況も結構あるんです。
著者は、「因果関係」が確定できないことを前提に、「原因」「結果」に深入りするのではなく、「起こりうること」に着目することを薦めます。
(p46より引用) ビジネスや日常生活において、「原因と結果」という発想から「万が一、起こってしまったら?」という「リスク評価」の発想に転換することにより、よりよい展開に持ち込むことが可能になるのではないでしょうか。
この他、本書では「科学的(物理学的)切り口」で、ビジネスにおけるいくつものアドバイスを示しています。
たとえば、「間主観性」から「お客様の視点」の重要性を説いたり、「振り子の運動」から「キーパソン」をおさえることを薦めたりといった記述です。
ただ、このあたりは、ちょっと無理筋かなといった印象があります。ビジネス書にしては、正直、論旨が中途半端で納得性が低いと感じました。やむを得ないところもあると思いますが、ビジネスシーンとしてのリアリティが極めて低いのです。
むしろ、ストレートに「科学的な思考プロセス」を前面に出した方がいいと思います。物理学や数学における問題の解法を材料にするのです。問題に対する具体例なアプローチ方法にフォーカスして、それを素直に提示した方が、読者にとっては「実務への応用に資する基本スキーム」という意味で参考になるのではと思います。
ちなみに、蛇足ながら、本書で紹介されていた「ハマースレー型ソファー」の問題といったトピックには、非常に興味深いものがありました。