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【全文公開】 CHAPTER 2-01 そこに存在しながら、 誰にも見えていなかった解答 | 田舎暮らしを科学する仕事っぽくないデザイン

デザイン読書日和」という同人誌即売会&交流会で出典した『 田舎暮らしを科学する仕事っぽくないデザイン』(¥300)全60Pのスローライフエッセイ、全文公開チャンレジです。

今回は、CHAPTER 2-01 そこに存在しながら、誰にも見えていなかった解答の記事公開です。

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CHAPTER 2-01-00 そこに存在しながら、誰にも見えていなかった解答

地方で暮らし働くことが現実的な社会に変容した今こそ、フィールドワークの重要性が再注目されています。フィールドワークは学術研究目的だけでなく、人間にとって生活を豊かにする創造的思考トレーニングを日常的に取り込む恒久的な習慣です。

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CHAPTER 2-01-01 自然の中で遊びながら育む 感性のデザイン体操

「現代のダ・ヴィンチ」と言われたアートの奇才ブルーノ・ムナーリは「アートと遊ぶ」ことで創造的思考が育つ「ブルーノ・ムナーリ・メソッド」という独自の教育体系を発展させました。
視覚、聴覚、触覚、嗅覚など“複合感覚”を活用して自然やモノを感じ自己表現を促す方法です。「創造とは本質の追求」という信念を持っていたムナーリは、子どもたちにとって「遊び」こそ、複合感覚を呼び覚ます体験と考え、例として自然の中で遊ぶことによって見る景色、漂う匂い、水の冷たさや、ざらついた土などに触れるフィールドワークを推奨しました。

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参照: Bruno Munari's ABC 自然や生態でアルファベットを見つける


CHAPTER 2-01-02  そこに存在しながら、誰にも見えていなかった解答

建築家・デザイナーの阿部雅世氏はこのメソッド活用し、実験的にデザイン体験を共有する独自のワークショップ「デザイン体操ABC」を世界的に実施しています。これは、フィールドワークでの自然の観察を通してアルファベットや数字を発見し、分析、編集することでデザイン行為の原動力となる発見力と想像力を鍛えることができます。「そこに存在しながら、誰にも見えていなかった解答」を見つけ出す力を養うためのエクササイズで、大人もこどもも楽しめる学び多いワークショップです。オンラインでも身近な発見を共有することは可能なのでみなさんもぜひ試してみてはいかがでしょうか?

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参照:阿部雅世氏「デザイン体操 Design Gymnastic A.B.C」

CHAPTER 2-01-02  デザインや科学の楽しさをわかりやすく伝えること

『ファーブル昆虫記』で著名な昆虫学者、ジャン・アンリ・ファーブルは、あまり知られていませんが昆虫学者である以前に教育者であり科学者であり詩人でした。またファーブル昆虫記が世界的に評価された理由の一つが学術的な側面よりも、昆虫学における生態のデザインや科学的根拠と言ったものを解明する学術的で難解なプロセスを物語形式で万人にわかりやすく記したという点があげられます。
ファーブル博士とムナーリ氏の直接的な関連性は有りませんが「何かを複雑にするのは簡単だけれど、単純にするのは難しい」という共通の課題をもち後世の子どもたちへの創造的思考教育のためにフィールドワークにおける複合感覚の活用を教育体系やアウトプットに結びつけたことは本当に偉大な成果だと言えましょう。

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参照 : ナダールの撮影によるアンリ・ファーブル

CHAPTER 2-01-03  科学的な知識とフィールドワークをつなぐもの

「雪は天から送られた手紙である」こんな情緒的なメッセージを残したのは、加賀市片山津出身の中谷宇吉郎氏は雪や氷の研究分野のパイオニアです。雪の結晶の美しさに魅せられ世界で初めて人工的に雪の結晶を作り出すことに成功した科学者ですが、これも幼少期にフィールドワークで培った力にほかなりません。「中谷宇吉郎 雪の科学館」は、宇吉郎氏の歩んできた変遷や研究の成果をダイヤモンドダストや雪の結晶化など体験で楽しむことができます。
大人になってからはじめるフィールドワークは顕微鏡や知識を組み合わせた観察の幅が大きく広がる良例です。アマチュアの研究者による発見も多く輩出されているのでステイホームを機会にそんな世界に踏み入れてみるのも面白いかもしれませんね。

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参照 : 中谷宇吉郎 雪の科学館 雪の結晶化構造

まとめ

今回は「Designship 2018」でも登壇なさっていた建築家・デザイナーの阿部雅世氏の言葉を引用した見出しとなっています。フィールドワークによる観察眼のトレーニングを通して、身近な自然の中にある美しさやデザインパターンを見出すというテーマ性を持った2章のはじまりです。

田舎暮らしといっても全国どこでも自然資源に恵まれているわけでなく、このご時世手の行き届いた管理された公園や山はそれほど多くありません。

しかし視点を変えてみると四季の変化や、木々の作りや構造にまで目を向けてみると偶然の産物と言えるにしては可怪しい、何者かによってデザインされたコト・モノに目を留めることが出来ます。

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普段、商業的なデザインやすでに出来上がったモノを使い、触れているだけでは気づかない質がそこにはあります。

ぜひ皆さんも自然探訪のフィールドワークに出かけてみましょう。

次回に続く。

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Noriaki Kawanishi
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