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砂漠祭り後編 in ジャイサルメール【インド#5】
ジャイサルメールの砂漠祭り1日目は、ターバン巻いたり、取材を受けたり、フジロック感満載だったりで、とにかくカオスだった。
さて。
砂漠祭りの2日目。
聞けば、会場の一つがキャンセルになって、一部が中止となったらしい。
年に一度の祭りで、どうして直前にそんなことになるのか全く理解できないが、そこは聞いても仕方ないので、ふーん、という程度に流しておいた。
そのため、2日目はそんなに目玉になるものがなさそうではあるが、気にせず出発。
①砂漠祭り2日目開始。
ヒロシのバイクで、昨日とは違う少し遠い方のスタジアムへ連れて行ってもらう。
スタジアムと言っても砂漠ぽさが否めない場所。
今日もツーリスト席へ鎮座。
ツーリスト席は、VIP席のすぐ近くなので、日陰になっていて、とても居心地が良い。
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砂漠祭り2日目にして感じたことは、とにかく段取りが悪い。
タイムスケジュールなんてあってないようなものだし、何もない時間が長すぎる。
そしてここは砂漠。
屋根があったとはいえ、暑さと日差し、顔に降りかかる熱めの砂がキツイ。
3日間の砂漠祭りは、おそらく私に企画と司会を任せてくれれば、1日、1か所でテンポよく終わらせることができるイベントである。しかし、段取りを重視する日本的私的発想はここには不要。
ヒロシたちインド人は、しょっちゅうこう言った。
「India is great,but always late.」
まさにその通りである。
これさえ言っておけばなんでも許される感。
私の口癖にもなった。
2日目は、この地の政治家?重鎮の人?たちの着席セレモニーから、それぞれにターバンを授与して、たすきをかける儀式を長々と行う。そして、VIPたちは、着席したとたんにターバンとたすきを外して秘書的な人に鏡を持って来させて髪型を直す、というのをツーリスト席からじっくりと見学する時間。
隣の旅仲間と、VIPたちはよっぽどターバンを被らされるのが嫌なのかな、と笑っていた。
②インド人みんな大好きBSF
「BSF!」
司会がやたらと連呼する。
ツーリスト以外のインド人たちも「BSF!」と喜んでいる。
なんなの、BSF。
ヒロシに聞いたら、
Indian Border Security Forceの略で、インドの国境警備隊のことらしい。
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この地図で見ての通り、ラジャスタン州のジャイサルメールはパキスタンに近い。インドとパキスタンとの関係は緊迫状態にあるため、国境を警備するBSFがこの地を、インドを守っている。
そんなBSFの皆さんが、それはそれは格好良く歩いて行進したり、ラクダに乗ってまた現れたり、威厳ある立ち居振る舞いでインド人観客を魅了していた。
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私たちツーリストはと言うと、すっかり飽きてきて、ヒロシの友達のインドとイタリアのハーフのファブが買って来てくれた、ベルプリというスナックを食べてお喋りしたりうたた寝する時間となった。
ベルプリはマサラ味のポン菓子とヌードルと玉ねぎとかの野菜が混ざった食べ物で、チリが入ってなければものすごく美味しいオヤツだった。
ちょっと辛すぎたけど、なかなかイケる味であった。
③とにかくラクダとBSF
BSFの人たちによるラクダの曲乗りコーナーが始まった。
最初は「おお!」と驚いていたが、予想の3倍続いたので、正座バージョンとか中腰バージョンとか、向こう側に隠れるバージョンとか、眠くて仕方なかった。
BSFは、本当に国境を守っているんだろうか?ラクダに乗る練習ばかりしてるんじゃないのか?と疑ってしまう私であった。
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そしてキャメルポロの試合とか、キャメルレースとか、突然始まるミニステージでのジプシーダンス。
ちなみに競技と競技の合間は、果てしなく長い待ち時間がある。
私はしょっちゅう寝ていた。そして日焼けで顔が痛くて目が覚めた。
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コースと全然違う方向へラクダが走っていってしまい失格になる人が1レースに1人はいる。はるか彼方まで行き、それを連れ戻す待ち時間も果てしなく長い。
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そしてそして。
今日もまたやるんですか?な綱引き大会。
何がそんなに面白いのか全く分からないが、応援の歓声もすごいし、終わった後もインド人だけ爆笑している。
ラクダの上に立ってまで見る人たち。
ちなみに2日目の大目玉の対決は、
ムスリルの男チームVSヒンドゥー教の男チーム。
明らかにムスリルチームの方が、肉をたらふく食べてるんですねというイカつい体格をしていて、綱引きをする前から勝負は見えていたが、予想通りムスリル圧勝であった。
やはり、肉は食べて生きていこうと私は強く思った。
2日目は長時間砂漠スタジアムにいて疲れたため、夜の部はチラッと見てまたフジロック、インディアバージョンだったのですぐに退散した。
④3日目はジープで愛の砂漠へ
3日目最終日の砂漠祭りは、サム砂漠というジャイサルメールからさらに奥へと進んだ場所にある砂漠で行われる。
宿の仲間たちと話し合って、ジープをシェアして砂漠へ向かうことにした。
フランス人の超美人オードリーと、アメリカ人のマコーレカルキンがぐれずに大人になった感じのシュア。一人旅同士でインドで出会ったカップルと、オーストリア人のマギー、白髪で高齢だが格好いい女のフランス人のナタ、そして私の5人。
それから、付き添いに、宿のオーナーのジェイムスと、運転手にヒロシ。
片道1時間半ほどかけてジープで向かった。
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タール砂漠の一部のサムに到着。
私は以前モロッコのサハラ砂漠をラクダに乗ったりキャンプしたり野宿したりしたことがある。世界を色々旅したが、あのワルザザード、メルズーガの赤い砂の砂漠は今まで見た中でもかなり上位に来る絶景であった。
そのため、インドのタール砂漠に対しては全く期待していなかった。だから、サムに着いた時も正直、感動はなく、あくまで祭りを楽しみにきただけだが、旅仲間たちは、サム砂漠のあまり大したことない感じに、少しがっかりしていた。
すぐ横を車道が走っているし、ゴミが多いのと人が多い。砂漠と言うか砂丘。一部だけ砂でできています、という雰囲気。
でも私は、この限られたゾーンだけでできている砂丘に、ものすごくたくさんのインド人や外国人ツーリストが詰めかけていることが面白かった。
しかも、この日の砂漠祭りの催しは、砂漠でバイクレース、砂漠でキャメルレース。
それを追いかけるように走るインド人たち。
コース沿いに人が並んでじっと待つ姿。
面白すぎるじゃないの、とニヤニヤしてしまった。
それが終わってから、砂漠リゾートみたいなところへ行き、ポテチを食べて休憩し、サンセットを見にまた砂漠に戻り、日が沈んだらまたリゾートに戻ってジプシーダンスを見ることとなった。
この日は満月で、夕日にうっとりしていたら、満月に魅入るという忙しい18時から19時の時間。
ちなみに、砂漠では、砂がカメラの内部に入り込んで故障しがちなので(サハラ砂漠で学んだ)、GRはほとんど使わずiPhoneでの撮影。風が止んだ日の入り後、少しGRを使ったが、あまりうまく撮れなかった。
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かなり効いてくるのはまた別の話。
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⑤愛のジプシーナイトショー
ジプシーダンスショーも、Indiaはalways lateなので、1時間半遅れて始まった。
始まるまでの間、暇を持て余したインド人たちが爆音でインドの音楽を流して激しく踊る時間などあり、私はマギーと2人でコーラを買ってまたポテチを買って食べながら喋っていた。
インドとイタリアのハーフ、ファブとは行く先々で何度も偶然出会っていたのだが、ポテチを食べていると、またファブがポーランド人のかなり個性的な彼女モニカを連れて現れたので、笑った。
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ジプシーダンスはなかなか見応えがあったが、私は待ち疲れてしまっていた。
もう20時を回っていたのでお腹が空いていて、ふるまわれたチャイとパコラ(野菜の天ぷら)をお代わりして食べた。
ボーッとショーを見ていたら、ジプシーのダンスに混ざって、突然ファブの彼女モニカが乱入してオリジナルのダンスをし出してビックリした。
何でもありやな。
踊り終わった後、ファブが無言でモニカに親指を立ててGoodというジェスチャーをしていたのが素敵だった。
ナタリーとシュアのカップルも疲れてきていて、互いに寄り添ってほとんど寝ている。
マギーは、「スピーカーが爆音過ぎるからボリュームを下げて」という主張をスタッフを呼びつけて何度もしていたが、結局最後までボリュームは爆音のままだった。
ナタはショーが始まってすぐに席を外していて、しばらくしてから戻ってきて、「これ以上ここにいたら、クレイジーなスピーカーに殺される。みんな、どう思う?帰るか残るか一人一人の意見を聞かせて。」と提案してきた。
私は助かったと思った。
マギーもオードリーらも「もう帰りたい。お腹が空いた」とハッキリ言った。
私は野菜の天ぷらをおかわりしまくっていたのでお腹は空いていなかったが、「もう眠いので帰りたい」と言った。
なぜかみんなが私に、「それは正直な気持ち?正直に言って。」と何度も確認するので、「もう21時だし、今からジープで帰るまでに1時間半かかる。私はいつもならもうベッドで横になっている時間だし。you know?」と言ったら、「I know.」と全員が言った。
いつも夜の宿でのおしゃべりタイムで、21時になると途中でもさっさと寝床に帰る私をみんなが知っていた。
その結果、ショーの途中ではあるが、みんなで帰ることに決定。
マギーは会場で仲良くなっていたイケメンの男に連絡先を教えていた。
そしてまたジープに1時間半揺られて宿に戻った。
さっさと寝たかったが、みんなとの最後の夜なので、屋上のカフェでみんなとの乾杯に付き合った。
オードリーとシュアはインドの旅が終わったらフランスとアメリカと離れ離れになるらしく、それについて話し合っていた。
いつの間にかジェイムスとナタは付き合うことになったらしく30歳の歳の差でもラブラブだったし、マギーはイケメンとのメッセージのやりとりで忙しくて、ヒロシは私との別れが辛くて泣いていた。
砂漠祭りって一体何だったのだろう。
よく分からない。
ジャイサルメールってどういう町なのだろうか。
1週間いた結果、よく分からない。
愛が生まれまくっている。
私には生まれていないが。
この町を去る準備を始める。
私の枕元に置かれたターバンが輝いている。
黄金の町での勝利の証。
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全身砂まみれで髪の毛もブラシが通らないくらいだったが、シャワーからお湯は出なかったのでもう諦めた。
そしてやはりWi-Fiも繋がらない。
ジャイサルメール。
アラジンのような世界で、よく分からないことが起きたり起きなかったりした日々だった。
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