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スペインのフェスで跳んだ!2023夏。


1997年の第一回のフジロックフェスティバルでフェスデビューをして以来、夏はフジロックとサマソニに通い、夏フェス大好き人間として生きてきた私。


コロナ禍で夏フェス、ライブという楽しみを奪われ、これを機に音楽ライブは、年齢とともにそろそろ引退していく人生になるのかなと思うくらい、気持ちはしぼんでいた。
10〜20代の頃、「何歳になっても、ライブに行って音楽を楽しむ大人になろうな」と言い合った音楽好きの仲間も、結婚したり子供ができたり、仕事が忙しくなったりして、見事に30代を過ぎた頃から去って行き、私だけが残っているような気がしていた近年。
それに関しては、我が道をいくタイプなので別に気にしてはいなかったが、コロナ禍でライブ自体が停止した時に、私も潮時なのかも知れないなと思ったりした。

若い頃の私は、海外のロックフェスティバルに憧れていた。ケイトモスが幅を利かせていた時代。Hunterの長靴を履いて短パンを履く。ああいう格好をして、フェスの本場のイギリスのグラストンベリーにいつか行きたい。
叶わないだろうなと思いつつ、ぼんやり考えていた。
「夢見ていた」という表現は好きじゃないので使わないけれど、一般的な意味としてはそれに近い。
フェスの本場はアメリカのウッドストックだろうという意見もあると思うが、私の好きな音楽は主にイギリスのパンクやロックなので、やはり私にとってのフェスの本場はグラストンベリーである。
しかし、年月が流れ、少し最近の音楽にもついていけなくなり、私が行きたいのは90年代後半のグラストンベリーフェスティバルだと気付いた。それは絶対に叶わない願いだったので、やはり諦めざるをえなかった。

世界多分一周旅でヨーロッパに2ヶ月滞在している中で、ポルトガルやスペイン、イタリアなどの町のあちこちで、ロックバンドのライブ告知のポスターやロックフェスティバルの広告を見かけた。
見かけるたびにまじまじとそのポスターを見て、スマホで検索して、ラインナップや金額や細かな情報を調べて、いいなぁと思ったりしていた。
やはり私にとって興味がある情報なので、町歩きのたびにライブの告知ポスターが目に飛び込んでくるようになった。人は見たいものを見て、見たいものしか見えなくなるから、私をライブに勧誘しているようにしか思えなくなったのである。
海外アーティストの来日もよくチェックしているので、ああ今年レッチリが来るのかなど見つけては、今年は行けないなぁとがっかりした。
それもまた、海外でのライブ参戦に拍車をかけた。
そして、目当てはスペイン、マドリードのMad Cool Festival に絞られていった。

私がフェスデビューをした第一回の台風の中のフジロックフェスティバルで見たRed Hot Chili Peppers (今海外かぶれなので、日本だけの呼び名「レッチリ」と略さず、「RHCP」と以下略す)が、なんとマドリードのフェスに出るというポスターを見た。
RHCPは来日したら必ずライブに行っていたが、ギターのジョン・フルシアンテがカムバックしてからは見ていない。
ジョンのギターと美しいコーラスを聞きたい。彼はギタリストとして凄まじいテクニックを持っているが、それよりも私が惹かれるのは彼のコーラスである。美しい。

そして、同日のラインナップに元OASIS(今海外かぶれなので、「オアシス」と呼ばずにちゃんと「オエイシス」と呼ぶ)のフロントマン、リアム・ギャラガーも並んでいた。
リアム(弟)とノエル(兄)はほぼ毎年交互で日本のフェスに来るので、毎年兄弟のどちらかを見ているが、コロナ禍で見ていないし、そろそろ弟の声を聴きたくなった。


続いてPrimal Scream
イギリスのちょっと気取ったオシャレな90年代のバンド。2017年にZeppで見たが、そこまで好きじゃなかったけど、なんか多幸感があって良かったライブだったのでまた見たい。

それからThe Prodigy
目を疑った。The Prodigyのフロントマンでバンドの象徴でもあったキースが、コロナの直前に自殺をしたというショックな出来事があった。キースのいないProdigyなんて考えられないと思っていたけど、立ち上がるマキシムの姿も見てみたい気がした。

もうこの4枚のカードが揃ったら、もはや90年代のグラストンベリーっぽいし、そりゃ行くだろうと思いつつ、スペイン付近の国を行ったり来たりして旅している効率の悪さに、少し思いとどまってしまっていた。
だが、イタリアのナポリでColdplayのライブを聴いた時に、よし、やっぱり行こうと決めた。
それからバルカン半島を駆け抜けてスペインマドリードに戻ってきた。



我ながら、相変わらず前置きが長い。
なかなかフェスに辿り着けないが、前編後編に分けるほどでもないと思うので、まだ続ける。
お待たせしました、いよいよフェスに行きます。 


まず、海外のフェスは初めての私。
しかし、日本のフェス文化は海外から取り入れて真似ているから、フジロック、サマソニの参戦回数が数えてないから分からないくらいたくさんある私にとっては、余裕だとたかを括っていた。
スペイン語をかじっているとはいえ、文章になるとよく分からない私が、翻訳機能を使って公式サイトをちゃんと読み、チケットを買い、リストバンドは当日現地で交換スタイルを選んだ。
リストバンドにキャッシュレス機能をつけて会場はそれですべて支払うシステムだとのこと。それは日本より進んでいる。財布は置いていき、10€札とクレジットカード1枚とスマホ、水筒とタオル、日焼け止めと帽子をウエストポーチに入れて身軽なスタイルで向かった。

道中、私の大好きな生ハム博物館こと「Museo de jamon」に寄り、生ハム博物館なのにイカフライのボカディージョ(サンドイッチ)を食べ、ついでに生ハムのボカディージョとドリンクとスイーツがセットになったピクニックセット2.9€を買って、持ち込むことにした。
公式サイトによると、「ボカディージョ1個までは持ち込み可能」と書かれていて、むしろ持ち込まないといけないのだと解釈した。
さすがスペイン、おにぎりじゃなくてボカディージョなのか、と感心した。

今年のバースデーパーティーで食べて以来、イカについて見直しており、一目置いている。
ピクニックセットがウエストポーチより大きい。


公式サイトの行き方通りにメトロに乗り現地に着いたが、日本のフェスほど目印もないし、盛り上がっているようなのぼりとかも何もない。立地は大阪のサマソニに似ていて都会の郊外の倉庫街のような場所。メインゲートに着いても、「Mad Cool Festival」 とどこにも書かれておらず、少し不安になった。

いいねぇ、スペインのフェスっ娘
普通ゲートにフェスの名前書くと思うんだが、スポンサーらしきワードだった。


入場口でリストバンドに変えてもらう。
スタッフは、ぺちゃくちゃ喋りながら片手間で私の対応をする。
さすがスペイン。感心した。
誘導するスタッフも、ドレッドヘアでお尻の下が出ているショートパンツのイケイケ女が、スペイン語で大声で「ビエンベニード!(ようこそ)」と叫んでいる。いやそれは分かったけど、どっちに進むのかをアナウンスしてよ、と思わなくもない。
そしてゲートでの荷物検査で、私のデカスロンのウォーターボトルを没収すると言われて、びっくりした。
ペットボトルがダメだと理解してしまっていたが、水筒もダメらしい。
「会場内に給水ポイントがあるから水がいつでも飲める」と公式サイトに書いてあったのに、ボトル全部ダメなら、どうしろというの。意味が分からない。
ボトルは返してくれと言うと、笑顔で、「入場口の手前に戻って荷物預かり所に預けて」と言われ、1からやり直すこととなった。水筒1本だけを3€で預け、再度仕切り直しし、やっと入場できてホッとした。安い水を買って入れてきた意味がなかった。

そういえば、リストバンドにお金をチャージするやり方が分からない。
公式アプリを見ようとしても、会場内が圏外で見れない。Wi-Fiを探したがどこにもない。
どうしろと言うの。
途方に暮れていたら、イケメンエスパニョールが、「お金をチャージするゾーンがあるよ」と教えてくれた。
そこに行ってみると、スタッフがマンツーマンでクレジットカードをピッとして、リストバンドをピッとして、リストバンドの中に入金するシステムのようだ。
そこは人がやるんかい、と思いつつ、それでもオールキャッシュレスのアイデアはハイテクだと思った。
狙っていたRHCPのTシャツが40€(6300円くらい!)もするのに震えたが、これは記念だから良しと思い、50€チャージしてTシャツを買った。

私は口渇感の強い体質なので、水分を持たないで外に長時間いるということが不安で仕方なかった。一刻も早く水分を持ちたい。ペットボトルの水を買いに行くことにした。
日本のフェスと違って、食べ物を売る店に飲み物を置いていないらしい。
なぜなの。一緒に買えた方が絶対いいのに。
別の店に2回並ばないといけない。どうせどこも高いし、私にはピクニックセットがあるから飲み物だけを買えばいいからいいやと、食べ物を楽しむのは諦めた。
そして食べ物の店は、日本のフェスで主流のラーメン、丼系は当然ない。パンに何かしら挟む系か、ピザが主流のようだ。

イカフライサンドにまた惹かれる。
和牛はあった。


飲み物を求めてバーカウンターのようなところへ行くと、フェスのイラストが入ったプラスチックのコップに、ペットボトルの水を注いでくれた。
そしてコップに入り切らない分の水は、そのままペットボトルをキャップを外した状態で手渡してくれた。
「いや、キャップちょうだい」と言うと、「それはできない」と言われ、キャップのないペットボトルとコップを持たされることとなった。
どういうことなの。
エコの観点でもなさそうだし意味が分からない。
水だけで両手が塞がってしまった。
コップの水を飲んで少し減らして、ペットボトルの残りの水を注ぎ、ボトルはゴミ箱に捨てた。
そのコップも可愛くて良いが、しっかりとふちのバリが取れておらず、尖っていて口の端を切った。最悪である。日本なら検品で絶対引っかかると思う。
さすがスペイン。
そして頼んでもないコップ代に1.5€とられていた。
コップが邪魔で仕方ないのだが、周りの人を見るとみんな首から赤いストラップをつけてコップをぶら下げている。
また別のイケメンエスパニョールに聞くと、「あそこで無料でもらえるよ」と教えてもらい、無事にストラップをゲットした。ストラップをつけて、両手が空いたと思って歩くと、2歩歩いただけで盛大にこぼれた。これ、失敗だと思う。
首から下げたコップを、しっかり手に持って歩くことにした。
何のこっちゃ。

地味にかさばるサイズ。


会場はとにかく暑いので、スペイン人は日陰で座り込んで、パーティーをしている。人工芝を会場全てに敷き詰めるというアイデアは、大変良いと思った。
フジロックで問題になっている折り畳みの椅子の持ち歩き問題も、ここでは起きない。椅子などいらないから、みんなその辺で座ったり寝そべっている。人工芝だと気兼ねなく座れるし、ステージ前も砂埃が舞ってドロドロになるということもなさそうである。

ただし、タバコ(電子タバコではない)をどこでも吸えちゃうのがキツい。今の日本での10年分くらいの副流煙を、この半日で体内に取り入れたと思う。ライブ中も前と横の人が吸ってたから、ちょっとタバコの火が怖かった。まあポイ捨てもひどい。ゴミ拾いスタッフがしょっちゅう拾いに来ていたが、この辺は日本のフェスでは考えられないと思った。フジロックのゴミの分別への意識の高さを、研修で見に来てほしいくらいである。
まあ、それもいいとして。

芝生に寝転びながらステージから聞こえてくる音楽を聴くのはフェスの贅沢な楽しみ方。
大阪ジャパン虎


娯楽ゾーンもなかなか面白い。
フェス用のグリッターメイクコーナーは、老若男女、その名の通りおじさんおばさん、普通の男も顔にグリッターを塗ってもらっていて長蛇の列。
さすがスペイン。
それからなぜかハンマーで力試しコーナーとか、高速回転観覧車などがある。
会場を見て回るだけでも楽しい。

キラキラ率高い。
なぜ力試しをする必要があるのかは謎
RHCPのTシャツ率高め
全然5G飛んでない。圏外。

トイレは、ライブ前は空いていてすぐに入れたし、男女に別れているのはいいなと思ったが、誰かのライブの直後などはまあひどい。人が押し寄せて、列などない。
人混みの中を割り込んで、そこへ入っていける人だけがトイレゾーンに入っていくスタイル。男性はトイレではない場所にずらっと並んでいて、何してるのかと思えば、尿臭が充満。
おいおい。
人工芝なので、濡れてるのかどうか分からないのでかなり危険地帯である。
どうにか、おしくらまんじゅうを抜けて女子トイレゾーンに入ると、水道が壊れたのか水溜まりが池みたいになってて、それを抜けないとトイレに行けない。この水が水道水であることを祈りながら泥だらけになって進む。
トイレ前の芝生で座り込んでボカディージョを食べているヤング女子がいる。
逞しすぎて感動した。
トイレ内は予想外にきれいで洋式でホッとしたのだが、手洗いの水道で、脇の下をガシガシ洗う女子が多すぎて、なかなか手を洗えない。
さすがスペイン。
もう何もかも楽しくなってきた。

そもそも会場に動線が考えられていない気がする。どこに行くのも人混みで動きづらい。フジロックやサマソニのように一方通行の道などはない。
誘導係もいないし、全然身動きが取れないけど、誰かと出会うたびにそこら中で呑気にハグしあって立ち話をするスペインの人たちに、会場内を効率よく移動できるための動線は必要ないのかもしれないと思った。

ビールを飲もうと思い、また飲み物売り場に行くと、こちらも予想通り長蛇の列。仕方なく並んだのだが、なかなか進まない。よく見ると、並んでいるように見えて並んでなくて横入りも多いし、売り場のスタッフとビールを入れてもらった客が、いちいち長話をしている。
いやいや、後ろ見てみて。
こんなに並んでいるのに、どうして「何が1番売れてるの?」「prodigy何時からだっけ?」「スタッフも見れたりするの?」「私、カタルーニャから来たのよ」「今日32℃超えてる?」などの話をする必要があるのか。
日本でそれやったらブーイングの嵐である。
さすがスペイン。
バル文化はフェスでも健在。
できればコップに別の飲み物を入れる時はゆすいで欲しいタイプなのだがゆすがずそのまま注ぐ。コーラの後にビールでも全然気にしない。
もはやどこで何を見てもおかしい。

18時からのリアムに備えて、ステージ前で、ボカディージョを食べながら待機することにした。
スペインの固いパンでおなじみのボカディージョで、コップで切った口の端に気をつけながらも、次は口の中を怪我しそうな勢い。ぬるくなったヨーグルトも食べて準備万端。

裏も可愛い


隣に並んでいたProdigyのTシャツを着てカラフルなマントを羽織って、ヘアスタイルが昔のキースみたいにしている女性と喋りながらリアムが始まるのを待っていたら、ノリノリのハットを被った美人も来て、「実はアイルランドから来た姉妹なのよ」と自己紹介タイムが始まった。
ミシェルとマリアと私で、かつてのOASISのライブをいつ見たかという話で盛り上がり、「マジで?あんた、日本でオエイシス何回も見てんの?!イェー!」とハットのミシェルがやたらとハイタッチを求めてきて、Prodigyが出るヨーロッパのフェスを追いかけて回っているというマリアのヨーロッパ旅の話も聞いた。



前置きとその他の出来事が長すぎて、なかなか始まらないライブの話。
そうお思いの方々。フェスに行ったことのある人は分かると思うが、ライブ以外の楽しみも、フェスの醍醐味で、むしろそれこそがフェスなのである。
フェスティバル、つまりは祭りなのだから。
そうは言いつつも、そろそろライブの話を書かねば、もう6000字を超えてしまった。

まず、スペインのMad Cool Festivalの特徴として、17時頃に開場という遅めのスタートだということに驚いた。


必然的に終わるのも遅くなる。
私の見たい4組のスケジュールはこうであった。

これは公式アプリのスクショだが、日本のアプリならきっと、時間通りに並ぶ設定にしてくれていると思う。
コップのフチのバリを取るとか、順番通りに並べるとか、会場内の動線を考えるとか、こういう細かな点が日本の誇れるところだと思う。

それはさておき、自分で並べ替えてみると、

20:15 リアム
21:50 プライマル
22:55 RHCP
00:50 プロディジー

略した書き方にした

日本のフェスに何度も参加してきたが、夜から4組を見るなんて人生初。
プロディジーは一体何時に終わるんですか。帰り道に不安がよぎる。
マドリード郊外から宿まで帰れるのかどうなのか。早めに切り上げて帰ろうかなとすら思う。

結論から言うと、ちゃんと4組見て満喫して、体を縦に揺らしながら宿に帰って、4時に寝た。最高のフェスだった。
簡単にそれぞれのアーティストのライブについてメモを残しておく。

①リアム・ギャラガー

日本(大阪)で、やる気のないソロライブを見たのが2018年。喉の調子も良くなく、1時間程度で切り上げて帰って、「お前なー」と言いたくなったライブだったが、マドリードのフェスでは喉の調子も良く、ご機嫌だったように思う。
彼が手を後ろに回して斜め上を向いて歌うポーズは、もうそのシルエットだけでカリスマなのである。
過去の真夏のサマソニでモッズコートを着ていたが、今回は長袖パーカーに短パンであった。短パンだから足元は暑くなさそうであった。
やっぱり調子の良い時のリアムの声はいい。あの声を持っている時点で優れた楽器であり、もう才能だと思う。ロックンロールスターと自分で堂々と言えるのは、今の世ではもう彼しかいない。
そして、会場全体で大合唱をしている。こんなにシンガロングできるアーティストは、今の世の中、ビートルズ、クイーン、オエイシスくらいである。
OASISの再結成に関するフェイクニュースが時々出るが、コロナ禍で一つになってみんなを喜ばせようぜ的な空気の時ですら、あの兄弟が仲直りしなかったということで、私は完全に諦めた。もう無理なのだと思った。ドンルクを聴きたければノエルの、Morning gloryを聴きたければリアムのライブに行くしかない。
関係ないけど、私の前でずっと喋るスペイン人のおじさん2人組がいて、鬱陶しかったので、2人の肩を叩いて「あんたらのトークを聴きに日本から来たんじゃないのよ」と伝えたら、めちゃくちゃ謝ってくれて静かになった。そして、色んな人が感謝してくれて、みんなとハイタッチする羽目になった。

若い頃のイケメンリアムをスクリーンに映し出すのは反則。



②Primal Scream

トイレに時間を取られすぎたのと、会場内の混雑で移動にものすごく時間がかかり、少ししか見れず。
おしゃれスタイリッシュボビーがおじいちゃんになっていてびっくりした。でも、細身のスーツを着こなせるのってやっぱり格好いいなと思った。チラっと見てRHCPのステージへ早めに移動。


③Red Hot Chili Peppers

私ももう既にスペイン人みたいになってきているので、汗だくの服をその場で脱いで、ブラトップ1枚になって、買ったRHCPのTシャツに着替えた。
いちいちトイレに着替えに行ってられない。でも脇の下は人前で洗わない大和魂。
Tシャツを着たら気合いが入る。
RHCPはアイルランド姉妹と別れて1人で見ることになっていたが、隣のスペイン人カップルと仲良くなって、3人で盛り上がった。復帰したジョン・フルシアンテ(ギター、どうしてもフルネームで言いたい)がやたらとスクリーンにアップで映る。日本ではフリー(ベース)が割と注目されがちだが、ジョン、ジョン、ジョンである。チャド(ドラム)と3人でジャムっちゃってアンソニー(ボーカル)が全然出て来ず、「ドンデスタアンソニー?(アンソニーはどこ?)」と私とスペイン人彼女と言い続け、アンソニー登場。
「Wowwww!アンソニーーー!」
アドレナリンが今年1番、いや、40代になってから1番出た瞬間であった。
ライブの1曲目は「can't stop」で始まることが多いのだが、ここで「Around the world」が来た。
もうこれって私へのメッセージ、私へ捧げる曲だよね。
痛いファンと化した私はそう確信していた。
関係ないけど、ライブの途中で後ろの中年の男女がどつきあいの喧嘩を始めた。女が男を殴り、男がやり返そうと女の肩を押したので、やめろと仲裁に入った。「頼むから集中させてくれ」と伝えたら、すんなり喧嘩をやめてくれた。
隣のスペイン人カップルから感謝されて、「サルー!」と言って乾杯する羽目になった。

あとはほぼ記憶にないが、飛んで跳ねて踊って歌ってときめいた。
私の青春がまだここにあった。
ありがとう。グラシアス。

アンソニーーー(iPhoneの壁紙にした)
半ズボン男子、スカート男子が今の私の好みのタイプ


④The Prodigy

RHCP終了後、隣のステージへ急いで移動。アイルランド姉妹と無事合流し、最前列へ。
途中で帰ろうかなという選択肢は消えていた。
マキシムが現れて大盛り上がり。
しかし、キースが出てこないのがとても悲しい。
Prodigyを追いかけてきているマリアは神妙な面持ちでステージを見つめている。ミシェルは疲れたらしく「後ろで見るわ」と去った。
あの曲の前奏がかかり、私とマリアは顔を見合わせて「フォー!!!」と言った。
そして2人でジャンプし続けた。
スクリーンには亡きキースのシルエットが現れて、スクリーンで彼も踊っていた。
前のスペイン人のイケイケ女は、ステージに背を向けてずっとこちらを向いて踊り続けている。乳がこぼれそうだが、こちらももう全てどうでも良くなり踊り続けた。
インドのクラブでは踊らなかった女だが、スペインのフェスでは踊り(主にジャンプ)続けた。
斜め前のカップルがおっぱじめんばかりの大人のキスを長時間し始めたのも、もはやどうでも良かった。
そして私は燃え尽きた。



**


無事に帰るまでがフェスだが、意外とスムーズに帰れた。
午前3時まで無料のシャトルバスが出ていてアトーチャ駅まで行けたし、ナイトバスの乗り継ぎもよく、あれよあれよと宿に着いた。
Prodigyジャンプで腰を痛めて前屈みに歩き、汗で髪の毛がぐちゃぐちゃで、日焼けで顔も黒くなり、サイズの大きいRHCPのTシャツを着たアジア人の帰還に、午前4時前なのに宿の受付の女の子が「クールね、Guapa!楽しかった?」と大きな声で私に聞いてくれた。
スペインのフェスは何から何までスペインで、最高だった。


盛りだくさん過ぎて文章が長くなり過ぎた。やはり前編後編に分けるべきだったかもしれないけど、この疾走感をお送りしたいので、分けずにそのまま疾走した。

うまいことまとめの言葉を書いて、私の旅、いや私の人生においてこの日がいかに特別な1日になったのかを意味ありげに書いてもいいのだが、それはやめることにした。
ありきたりな言葉で締めるべきな気がした。これ以外に表現できないフェスであった。

もう、最高!


アンソニーが1曲目に私に捧げてくれた曲「Around the world」を聴きながら。

I know I know for sure
That life is beautiful around the world
I know I know it’s you
You say “Hello" and then I say “I do"

世界中どこにいたって、人生は最高。

「Around the world」Red Hot Chili Peppers






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のりまき
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