最終日は本当に駆け抜けた。【世界多分一周旅バルカン編#8】
駆け抜けてきたバルカン半島の旅も最終日。
それはそれは、長い一日の始まり。
まず、サラエヴォを22時に出発するバスに乗り、8時間揺られてクロアチアのザグレブに向かう。
夜行バスで、指定席ではない場合は、私は迷わず最後列へ行く。
空いていれば、誰も最後列に座らないので、体を横にして足を伸ばして眠ることができるからである。
酔い止めの薬を飲んで、壊れているシートベルトをなんとなく足に巻き付け、腕一本だけ通してマイブランケットを被り、ダウンジャケットを枕にして眠る。
あっという間に熟睡していて、朝4時頃に足を叩かれて「パスポート!」と男の人に言われ、半分眠りながらカバンから出してその男の人に渡した。
クロアチアに近づいたのでチラッとiPhoneの画面の時計を見たら、携帯のsimが使えるようになっていた。だがとにかく眠くて、パスポートを受け取ってまたすぐ眠った。
また足を叩かれて、今度は全員もうバスを降りていて、「パスポートを持って降りなさい」と言われた。入国審査らしい。慌ててウエストポーチを持って、足をもつらせながらバスを降りて列に並んだ。
寒いなぁと思いながら、ふとウエストポーチの中を見ると、パスポートはあるが、財布がない。
一気に目が覚めた。
やってもうた。
サラエヴォのトイレで小銭を払った時に落としたのかも。
最悪最悪。
泣きそうになりながらウエストポーチをもう一度隅々探すが、やっぱりない。
バスに戻り、「財布がないの!」と運転手に言って、特別にバスに乗せてもらい、サブバックのリュックも探したがない。
うわーーー。
どうしよう、どうしよう。
バスの運転手は「入国審査に並べ」と急かすが、それどころじゃない。
仕方なくバスを降り(降ろされ)、クロアチアに入国するが、それどころじゃないのよ私。
盗まれたのか?
落としたのか?
必死に記憶を辿る。
順番を抜かしてバスに戻り、もう一度探す。半泣きでリュックやウエストポーチの中身をひっくり返して一つずつ確認しながら戻していくがないのである。
すると、ふとバスの座席の下を見ると、財布が落ちていた。
うわーーん。
良かったー。
パスポートを寝ぼけながら探して、渡した時に落としたのかも知れない。
助かった。
寝ぼけている時は絶対過ちを犯すから、気をつけなければならない。
とはいえ、寝ぼけているから、それは気をつけようがない。しかし、まるで睡眠強盗にあったみたいに眠い。
そして安心した私はまたすぐ眠気が襲い、深い眠りについた。
6時半頃、また足を叩かれて、「着いたよ、ザグレブ!」と半ば呆れている運転手に起こされた。
ほとんどの人がもうバスを降りている。
私のこの眠りの深さには呆れてしまう。酔い止めは1錠で十分に眠れる。
ザグレブのバスターミナルでもまだ眠くてたまらなかったので、サクッと観光する予定を取りやめて、バスターミナル内で寝ることにした。そもそもクロアチアにそれほど興味がなかったのもある。
デンに、クロアチアのドゥブロブニクに行かないのか?と聞かれたが、海のそばの綺麗な町はモンテネグロで十分味わえたし、ジブリ映画を見ない人間なので、魔女の宅急便のモデルになった町と言われても、それほど惹かれなかった。
駆け抜ける旅は取捨選択が鍵になってくる。コソボやセルビア、北マケドニアも行きたかったが、泣く泣く諦めた。
私は、選択の連続の中に生きている。
バスターミナルから一歩も出ないと決めたので、ザグレブのバスターミナル内のパン屋でBurekというリンゴパイを買って一瞬で食べ終え、ベンチで横になり、目を閉じたら、次に気がついた時は設定していたアラームが鳴った時、つまり次のバスの発車15分前であった。
ちなみに、荷物はチェーンロックをベンチに巻き付け、貴重品はお腹に抱えていたから無事であった。
さてさて、では次のバスへ。
次は昼前にザグレブ発、イタリアのヴェネツィア行き。こちらも8時間ほどのロングコース。
これは指定席だったため、最後列ではなく前の方の窓際の席だった。まだまだ眠い私は、窓に何度も頭をぶつけながら眠った。
途中、またパスポートチェックがあり、おかしいなと思ったら、イタリアに入る前に、スロベニアに入っていた。
バスは、スロベニアのサービスエリアのような休憩所に途中長めに立ち寄ったが、すごくオシャレで、ガーリックトーストとラズベリーのマフィンを買って食べた。めちゃくちゃ美味しかった。
そして、バスはまだまだ走り、精神科医療の聖地とも言われるイタリアのトリエステを通過。ここは、「自由こそ治療」というスローガンで精神科病院を撤廃した改革が行われた街。結構田舎町なんだなと思いながら通り過ぎ、またもラストうとうとしているうちに、ヴェネツィア、メストレ駅に到着。
長かった。
本当に移動しただけの一日だった。
疲れ果てた私は、ヴェネツィアから電車で10分ほど離れたメストレという駅のすぐそばのホテルにチェックインし、猛スピードで久しぶりのシャワーを浴びて、そのままホテルの外に出て、そんなつもりはなかったのにやたらと中華料理屋があるため適当な店に入って、猛烈なスピードでチャーハンと餃子を食べた。
なぜにヴェネツィアで中華なのかと自分に問いながらも、美味しかったので良しとした。
それから大急ぎでスーパーでバナナと6個セットのチョコクロワッサンを買ってホテルに戻り、歯だけ磨いてベッドに横になったと同時に気絶した。
とにかく眠気に襲われていた。
早く眠るためにすごいスピードでシャワーと夕食と翌朝の朝食の買い物を済ませることができる私は、やはりデキる女だと思った。
それよりも何よりも、以前から分かっていたが、酔い止めの薬の大人用はやはり私には強すぎる。子供用の薬で私は十分なのだ。
だが、お陰でおよそ13時間後まで一度も目を覚まさずに眠れた。
最高の朝を迎えることができた。
というわけで、イタリア、シチリアから出発したバルカン半島北上の旅は、無事にイタリアにまた戻ってきてヴェネツィアに到着した。
当初はイタリア国内を通って北上していく予定だったが、フェリーの航路を見つけてから、バルカン半島の旅に変更した。
イタリア国内だけを見るよりも、充実した時間になったように思う。
本当に言葉通り駆け抜けた旅だった。
駆け抜けながらも、どの国もどの町も印象深い。
休養も兼ねて、ヴェネツィアでは3泊してゆっくりする予定。
沈没とは逆の、こういうスピード感のある旅も楽しかった。
そして、睡眠を死守すること、ちょこちょこと食べられる時に食べることが、うまく駆け抜ける秘訣だったと思う。
酔い止めの薬は子供用でOKということを肝に銘じつつ。
お疲れ様、私。
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