なんとなくをやめ、市場全体を盛り上げる。業界リーダーの戦略に学ぶ(日経MJを読んで想うこと)
日曜日、時刻は朝の5時。
父「行ってくるよ、一緒に行くか?」
私「(眠いしちょっと面倒だけど)...うん、行く」
そんなに釣り好きでもなかった少年時代。
休日の父からの釣りの誘いは、正直アンニュイなものだったけれど、釣具屋で必ず買ってくれるのだ。ガーナミルクチョコレートを。
その何気ないやり取りは、いつしか大切な思い出となり、いまやチョコと言えばガーナミルクチョコレート一択である。どんなに高級チョコよりも、ガーナミルクチョコレートは特別な存在だ。
人はこれを”ちょこっと幸せ”と呼ぶ。
...かどうかはわからんが、単純なモノ消費ではなく、商品やサービスを通じて得られる体験を重視する「コト消費」は、何気ない日常の積み重ねの中にこそ、あるのだと想う。
ロッテ「チョコと幸せ」研究所 「ガーナ」60周年で(2024/2/7日経MJ)
2024年はロッテがチョコレート事業に参入し、主力ブランドの「ガーナ」を発売してから60周年の節目の年だ
ロッテはチョコレートが「ウェルビーイング(心身の健康や幸福)」に与える影響について、研究を進めると発表した
一見すると、チョコの売上はいったん脇に置いといて、60周年記念事業をやるんだと読めなくもないが、そうではない。
業界リーダーの戦略。市場全体を盛り上げる
チョコレートの市場規模を見てみよう。
ふむふむ。まだまだ伸びる市場なんだな。
ちなみに記事に、こうもある。
今後5年間でチョコレート事業の売り上げを23年度比で20%拡大させることを目指す
こんな時、業界リーダーはどんな戦略を取るのか。
フィリップ・コトラー先生はこう言った。
゛業界リーダーは市場シェアが大きいよな?
市場が広がれば広がるほど、シェアが大きいところが売れるよな?
しゃかりき営業するのもいいけど、目線を変えて市場そのものを広げたまえ。それこそがリーダーの仕事である(=周辺需要拡大戦略)゛と。
記事にもこうある。
新たな組織を設立するものではないが、チョコレートの存在意義に関する研究や発信を強化する。
チョコレートそのものをPRする。
ちょこっと幸せ研究所は単なる周年事業ではなく、ロッテの戦略そのものなわけだ。
業界リーダーの戦略。なんとなくをやめる
手っ取り早く結論を言おう。
EBPM(Evidence Based Policy Making)である。
...なにそれ?
それは、「よし、取りあえずやってみよう」をやめて、エビデンス(根拠)に基づいてポリシーメイキング(政策立案)しよう、というどちらかと言えば、政府や自治体に求められる考え方。
ただ、ちょこっととはいえ、そこは「ちょこっと幸せ研究所」なわけだから、EBPMでロジカルに考えよう。そういうロッテのチョコに対するひたむきさがうかがえる。記事にもこうあるのだ。
チョコレートがもたらす幸せについてエビデンスを研究していく
成長領域で注力分野に位置づけるチョコレート事業でもエビデンス収集を進める
研究結果。チョコレートを食べると短期的な幸福感を得やすい
ちょこっと研究所がさっそく研究結果をアップしていたので、どれどれ...そこから私が着目したのはこれ。
チョコレートを食べると短期的な幸福感を得やすい(64%)
これだ。釣りがどんなに退屈でも、チョコレートを食べれば我慢できる、そういうことだったのか(笑)
まとめ(業界リーダーから何を学ぶ?)
ここでリーダーから何を学ぶか。周辺需要はリーダーが拡大してくれるんだよね。でもリーダーは鉄壁だ。なぜなら記事にはこうある。
チョコレートの主原料のカカオの持続可能な調達にも引き続き取り組む
調達先での児童労働のリスク情報を把握する実証実験を22年の収穫分から進める
まさかの欠品(機会損失を防ぐ)ためにどうするか。
エシカル消費(道徳的に正しい消費)に敏感なZ世代にどう対応するか。
欲しいときにすぐ手に取ってもらえるよう、そして、その時はガーナミルクチョコレートを選んでもらえるような取り組みもしてますよ、そういう力強いメッセージだ。一部の隙もない。
じゃあ、中小企業はどこを狙うのかといえば、それこそ私にとってのガーナミルクチョコレート、何気ない日常の積み重ねの中にある「コト消費」。
...どうしても大手より価格が高くなっちゃうって?
コト消費、特別な体験はプレイスレスでしょう?
少なくとも、私にとってのガーナミルクチョコとレートは100円以上の価値がある。いま父と釣りに行けるなら、そのガーナは1,000円出しても高くない。値段なんて付けられない(=プライスレス)。
私たちは価格で勝負しない、体験(コト消費、つまり価値)で勝負する。
そう想って、スマホを閉じました。おしまい。