ベテランの技を社内に残したいとき最初にやること、それは。
なんちゃらモデルにあれこれ理論、これこれ分析。
経営学のフレームワークはアメリカ発のものばかりだと思われがちだが、日本発のものもある。
そのひとつがナレッジ・マネジメント。
ベテラン社員の知識や経験、技術を社内でしっかりモノにしようという考え方。暗黙知の形式知化と、よく言うやつだ。
そこには必ず、年を重ねることへのリスペクトがある。
今日はそんなお話。
東奥春秋 ワンオペ(2024/5/16東奥日報)
この過酷な作業を7年間、漁協の組合長が一人でこなしたという。まさに「ワンオペ」。
ところで、「むつ市大畑」と言われて、ピンと来る方が世の中にどれだけいるだろう。青森県民ですら、むつ市と言えば陸奥湾に面していると思ってしまいがちだが、実は反対側。乱暴に言えば、大間のマグロで有名な大間沖とほとんど一緒だ。
そんな荒海の沖合3キロにある養殖場で7年間、一人でこれをやってきたっていうのだから、想像を絶する。
荒波が育てた極上の海峡サーモン。ぜひご賞味あれ(私も食べました、なでかでめーよ)。
ナレッジ・マネジメントのナレッジ
まさにこれがナレッジ、7年間の積み重ね。
お宅の会社にも、たとえ当人が「いやいや、普通のことです」と思っていても、宝のようなナレッジが、あるでしょう?総務のおばちゃんや営業のおじさん(ジェンダーを無視した表現に陳謝)にこそ、そういうナレッジが詰まっている。
ナレッジ・マネジメントのマネジメント
まさにこれが、ナレッジ・マネジメントのマネジメント(...の一部)。「小言と思われているだろうな」の小言こそが、ナレッジであり、マネジメントであったりするわけである。
...いやそれ、普通のことでしょ?
と思うかもしれないけれど、体系立てて理論にしたのが、ナレッジ・マネジメントの生みの親、野中郁二郎先生。その考え方のモデルがこれ(↓)。
ナレッジ・マネジメント(SECIモデル)
どうだろう?
これ、社内でできているだろうか。
①で止まってて、それがOJTだ、あとは何とか自分でできるでしょ、で思考停止してないだろうか。
野中先生の言っていることは、できてるようでできてない。ナレッジはあっても、マネジメントできてないでしょう、ナレッジはマネジメント(①~④の流れを回す)してこそナンボなんだと。
イノベーションの父・シュンペーター先生が、イノベーションは新しいことを思いつくことじゃなくて、AとBの組み合わせなんだ(新結合)と言ったように、ナレッジ・マネジメントも③連結化、にたどり着いて、ようやく真価が発揮されてくるものなのだと思う。
①だけだったら、ただの引継ぎ。②ができても、ただのマニュアル化。
③ができたら、それってひとつのイノベーションだ、というわけです。
年を重ねることへのリスペクト
このナレッジ・マネジメント、第一歩は、社内に「年を重ねることへのリスペクト」があるかどうかだと想っている。
さっきの「小言と思われているだろうな」と併せて読むと、新聞業界もずいぶんベテランのノウハウが軽んじられているのかもな、と邪推してしまう。
だって、そりゃそうだろう。
世の中には、老人介護、とか、後期高齢者、とか、そのうえ老害という言葉まで蔓延っている。
そこには「年を重ねることへのリスペクト」が全然感じられないのだ。
世の中の若者に、そういう風潮が広まるのも無理はない。
ナレッジ・マネジメント、まずはここから。
一方で、エキスパート、スペシャリスト、マイスター...
特別な呼称や待遇でベテランをリスペクトする会社もある。
やり方ひとつで、年を重ねることへのリスペクトは社内に広めることができる。
そこにリスペクトがあれば、若手はそのナレッジを貴重に想い、ベテランは自身の価値にようやく気づく。
ナレッジ・マネジメント、まずはここから。
そう想って、スマホを閉じました。おしまい。
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