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40番 しのぶれど色に出にけり我が恋は物や思ふと人の問うまで(平兼盛)

この物語は
三羽烏さんの企画小説です
三羽様よろしくお願いします

   同級生

「おまえ、もしかして憧れとかじゃなくて、本気なの?」
純也の声が頭の上から聞こえた。

私の身長が158センチで、純也は182センチで
ちょうど頭ひとつ分違うから
いつも顔を少し上げて会話する。

「えっ!なんのこと?」
わたしは、誤魔化したが
純也の目は意外にも真剣だった。

「知られたくないのなら、せめて廊下を歩くやつを目で追うな!」
偉そうに言うので
「何よ!悪い!!」
と大きな声になった。
「別に誰を好きなろうが勝手だが、本気はまずいだろう」
と、わたしのことを気遣っているようだ。
「じゃあ、本気じゃない恋って何なのよ」
「おれが6人兄弟の一番下だから、うえの兄姉を見ていてわかるんだ。
耳年寄りかもしれないけれど、叶わない恋にのめり込んだ人は大概
自分か相手の家族をを壊してしまうんだと」
「何言ってんだか。まったく。誰が誰を壊すって?」
私は軽くあしらった。

そのひ日から、わたしは以前より気をつけるようにした。
みんなは受験勉強に必死で、
わたしのことなど気にしていないと思っていたのに、
純也に言い当てられた。
誰かが壊れるというのなら、それは彼ではなく
このわたしの方だろう
受験に失敗して、死ぬとか?
まさか、こんなに胸が高鳴り、この上なく仕合せなのに。
敵わないことくらい、百も承知だ。
だが、それで収まるくらいなら、それは恋とは呼ばないと思う。

そんな折、また1人の女子がわたしに聞いた
「もしかして、憧れとかじゃなくて、あの人のこと本気なの?」
不意打ちをくらいビックとした。
「あの人て?」
祐子の顔をまともに見ることができない
「分かるんだ。わたしも本気だから」
「そうなんだ。よく分からないけど」
祐子がにやりと笑った。

「あなたも純也のことが好きなの?本気で」
思わず、純也の名前を口にした。
「いいわ。あなたがそういうのなら、あの人のハンカチはわたしのものよ」
「前ボタンじゃなくて、ハンカチなの?」
わたしは、どうしても確めたかった。あの人がだれなのか?
「当たり前でしょう。背広のボタンなんかくれるわけないでしょう。
前ポケットに差し込んである、あの白いハンカチをもらうのよ」

わたしは隠せているつもりでいた。
隠さなければいけない恋だと思っていた。
でも、バレていたのだ。
分かる人には。分かるのだ,。
しかし、募る思いを隠し通せる人などいるのだろうか?
でも。わたしは焦ってはいなかった。
ハンカチは祐子に譲ってもいいわ
贈り物ならあの人からとうにもらっているもの

あの一度きりのハグだけで
もう一生生きて行けると思っていた

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どうもありがとうございました


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のり
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